春は寒暖差が大きく、「体がだるい」「気分がもやもやする」といった不調を感じやすい季節と言われています。憂うつやイライラを感じやすい人と、どんな時でもいつもごきげんに過ごせる人……、その違いは一体どこにあるのでしょうか。本稿は心のざわつきを整える「リセットスイッチ」について禅僧の伊藤東凌さんが解説した著書、『もやだるさんのリセットスイッチ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。
ネガティブ感情を断ち切れない
「もやだるさん」の正体
相手の反応が気になって、いつも心がもやもや。気持ちが休まらなくて、何となく体がだるい――。もやもやだるーい状態から、なかなか抜け出せない。そんな方を「もやだるさん」と名づけました。
もやだるさんは、気遣い屋さんで、頑張り屋さんです。だから、いろいろため込んで、疲れてしまう。そのネガティブサイクルを断ち切ることができれば、毎日、気分晴れやかに、楽しく過ごせるようになります。
こんにちは。私は、京都にあるお寺、両足院の副住職を務めている伊藤東凌と申します。
お寺にも、なんだか心がすっきりしない、イライラが続いて気持ちが落ち着かない、心なのか、体なのか、わからないけれど、だるい、頑張りたいけれどやる気が出てこない……、そんなもやだるさんが相談に来ることがあります。
もやだるが続いてしまうのはどうしてなのでしょうか?それは、イラッとしたり、カチンときたり、落ち込んだり、ショックを受けたり……、そんなネガティブな感情をためこんでしまっているからです。最初はささいなことだったかもしれませんが、そういった感情が、積み重なり、かたまりになって、あなたの心に居座っているのです。
では、もやだるさんと、いつもごきげんな人の違いはどこにあるのでしょうか?
それはネガティブな感情の取り扱いです。ごきげんな人は、感情がネガティブになっても、引きずられません。スパッと断ち切ることができます。だから、いつも明るく、生き生きとしているように見えるのです。
逆に、もやだるさんはネガティブな感情を断ち切ることが苦手なため、次から次に起きる、ネガティブな感情が積み重なって、いつまでももやもやが続いて、心がスッキリしないのです。
イラッとしたら、イラッとしたままにしておかない。ガックリしたら、ガックリしたままにしておかない。いったん感情をリセットして、次の感情を受け入れる。これが、もやだるさんから抜け出すために必要なステップであり、もやだるさんにならない方法でもあります。
気持ちを切り替えましょう、ということですが、「言うは易く行うは難し」。さくさくと切り替えられれば、誰も、もやだるさんになることはありません。まずは、気持ちを切り替えることを習慣化する。私は、それを「リセットスイッチ」と呼んでいます。
私も、みなさんと同じように、ムカっとすることもあれば、落ち込んで悲しくなることもあります。それでも、気持ちを切り替えられるようになったのは、お寺での毎日にリセットスイッチがたくさんあったからです。そのことに気づいたのは後からのことですが、部屋に入るときはいったん足をそろえる、手を合わせる、ろうそくに火をつける、お線香をたく……など、お寺の作法の一つひとつが、いったん気持ちに区切りをつけるスイッチになっていたのです。