元来、「コロナ」はラテン語で「王冠」を意味する言葉だ。メキシコの国民的ビール「コロナ・エキストラ」は、その名にふさわしく大胆な策に出る。日本向け製品の生産体制を今春から変更し、中国で製造を始めることが関係者への取材で分かった。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
「中国産」のコロナビールが
日本の店頭に並び始める
コロナビールが「中国産」へ――。
アフターコロナで酒類の需要が回復するなか、“攻めの戦略”に出るビール会社も出始めた。とりわけ大きな変更を予定しているのが、メキシコのビール大手グルポ・モデロだ。
看板商品である「コロナ・エキストラ」(コロナビール)の日本向け製品について、5月から中国で製造を開始し、6月頃から切り替わると取引先に通達していることが関係者への取材で分かった。
新型コロナウイルスの感染拡大で、“風評被害”に遭ったのがコロナビールだ。グルポ・モデロの親会社である世界最大手のビール会社・英アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は、「2020年の最初の2カ月だけで約2億2100万ポンド(約364億円)の売り上げが失われた」と、20年2月に苦境を明かしている。
ABインベブは、12年にグルポ・モデロを買収。コロナビールの他にも「バドワイザー」などのブランドを展開する。アジア地域では子会社のバドワイザーAPACがビールの販売・製造を行っており、武漢やハルビンなど13カ所に製造拠点を持つ。
ABインベブは23年3月、約1億元(約19億円)を投じて中国・四川省の工場を拡張すると発表。バドワイザーのほか、ヒューガルデンなどの銘柄を製造していく計画だ。
現在、日本で流通するコロナビールはメキシコの工場で製造されたものだ。
コロナビールの国内での販売を手掛けるABインベブ・ジャパンが3月に取引先に伝えた通達によれば、日本向けのコロナビールも中国の工場での製造に切り替わる。さらに、製造工場の変更に伴い、ビール自体にもある副原料を追加する改良が加えられるという。
中国に製造拠点を構えるメリットは、中国国内をはじめアジア各国への輸送コストを下げることだ。
次ページでは、コロナビールが中国産に切り替わる輸送費高騰の実態や新たにコロナビールに加えられる改良の中身、そして対抗する国内ビールメーカーの海外戦略についてお届けする。