ビール完敗#2Photo by Masato Kato

サントリー社長で創業家出身の鳥井信宏氏がダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。鳥井氏はサントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長が「次の社長だ」と公言する、次期HDトップの大本命である。「HD社長を見据え、経験と実績を残していく」と決意を示す鳥井氏が重ねて口にしたのが、国内酒類事業の「社内地位低下」への焦燥だ。特集『ビール完敗』の#2では、自他共に認めるサントリーHDの次期社長候補を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

22年はグループへの「約束」を果たした
スタンダードビールへの知見がない

――サントリーの2022年のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)販売数量は、前年比105%で市場平均の同102%を上回りました。

 23年と26年に酒税改正があるので、22年は勝負をしないといけませんでした。サントリーグループの中でも、国内酒類事業は積極的な予算を立てさせてもらい、かなりお金も使いました。

 ただし、利益面ではグループの他の会社に頼った形です。われわれはお金を使って結果が出た。当然の結果と言うとおこがましいですが、(グループへの)「約束」は果たせました。

――サントリーの主力ビールは、スタンダードビールではなくプレミアムビールの「ザ・プレミアム・モルツ」です。

 スタンダード価格帯の糖質ゼロビール「パーフェクトサントリービール」を21年に発売した際、営業部隊にこう告げました。「そう簡単に売れないぞ」と。なぜなら、サントリーは近年スタンダードビールがヒットした経験がないからです。

 プレミアムビールや新ジャンルと、スタンダードビールの売り方は違うでしょう。ですが、何がどう違うのかは正直分かりません。

 私自身も営業現場にいた頃、ザ・プレミアム・モルツと新ジャンル商品を手掛けましたが、スタンダードビールでヒットの経験はないです。

 ただ、パーフェクトサントリービールの売れ行きに苦労したことで、だいぶスタンダードビールの「売り方」を学びました。これは本当に良かったです。

創業家出身の鳥井信宏社長は、サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長が「次の社長だ」と公言する、次期HDトップの大本命である。「HD社長を見据え、失敗も成功も含めた経験と実績を残していく」と決意を示す鳥井氏が重ねて語ったのは、国内酒類事業の「社内地位低下」への危機感だ。次ページでは、鳥井氏が自ら率いる部隊への焦燥や目標と共に、サントリーHDの佐治信忠会長や新浪社長との「会話内容」をお届けする。