あなたは人からどう思われているか? どうすればもっと良い印象を与えられるか? 印象が形成される仕組みと、印象を良くする魔法のメソッドを紹介した名著『第一印象の魔法』の邦訳版が刊行された。心理学の知見から「言動」と「人に与える印象」の関係性を読み解いた、世界21カ国で刊行されるロングセラーの一冊だ。仕事、就活、転職、人間関係、恋愛――。すべての出会いがチャンスに変わる魔法のメソッドとは? 今回は、本書の内容の一部を特別に公開する。
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョン
他人に興味を示し、相手を知るために、意識して「質問」を投げかけているという人もいるだろう。
しかし、どんな質問でも効果が同じというわけではない。何を質問し、どのように問いかけるかによって、深いつながりを持てるか、それとも表面をなぞるだけに終わるかが決まる。いくつかのアプローチを比較してみよう。
フレッド「NPOで働いています」
ジュディ「そうなんですね、お仕事は楽しいですか?」
フレッド「はい、楽しいです」
ジュディ「そのお仕事を始めてどれぐらいですか?」
フレッド「2年です」
ジュディはフレッドに興味を示したが、クローズド・クエスチョン、つまり「ひと言」で答えられるような質問ばかりを使ったために、フレッドが説明を加えるチャンスを与えることができなかった。
では、会話が違う方向に進んだ場合を想像してみよう。
フレッド「NPOで働いています」
ジュディ「そうですか、素敵ですね。職場ではどんな活動に取り組んでいますか?」
フレッド「今は、太平洋諸島に暮らす人たちの健康への考え方を理解するプロジェクトに取り組んでいます。とてもやりがいがありますよ」
ジュディ「おもしろいですね。どんなところが一番好きですか?」
フレッド「プロジェクトを通じて、自分の考え方を見つめ直す機会になるんです。僕は父がイスラエル人、母がイギリス人なので、それぞれの祖父母の健康やスポーツに対する考え方の違いを目の当たりにしてきました。このプロジェクトでも……」
クローズド・クエスチョンでは、求めていた答えだけがそのまま返ってくる。一方、2つ目のシナリオのようにオープン・クエスチョン(「職場ではどんな活動に取り組んでいますか?」「どんなところが一番好きですか?」)では、フレッドに自分の仕事のことだけではなく、それ以上のことを打ち明けてもらえている。
(本原稿は、『第一印象の魔法』の内容を抜粋・編集したものです)
アン・デマレイス、バレリー・ホワイト
ファーストインプレッション社の創業者。ともに心理学博士。経営者や企業幹部の「第一印象」のコンサルティングに特化したユニークな事業は、新聞、雑誌をはじめ、BBC、CBSなど、多くのメディアで取り上げられ反響を呼んでいる。世界21カ国で刊行、全米ロングセラーの『第一印象の魔法』が日本でも刊行。