給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全――成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
PERは15倍を超えていたが、
数年で利益が数倍になることを考えると割安な水準
次に、アニコム ホールディングスの事例を見てみましょう。以下の会社四季報2014年3集(6月発売号)の図を見てください。売上高も営業利益も急速な伸びが続いており、5年間で売上高は2・3倍、経常利益は3・5倍となっています。
アニコム ホールディングスは、全国の動物病院やペットショップと提携して、病院窓口で保険証を見せるだけで保険料が自動精算できる仕組みと、ペットを買う時に同時にペット保険への加入を促してもらうビジネスモデルを作り、ペット保険の普及率を急拡大させることに貢献して業績を伸ばしてきました。
上図の会社四季報が発売された2014年6月の状況では、来期予想1株益43円、PER17倍、株価は745円でした。
PERは今期予想で26倍、来期予想でも17倍と、いずれも15倍を超えていましたが、利益がその後数年間で数倍になる成長性を考えると割安といえる水準でした。結果論ではありますが、この時点で同社の成長性を見極められていれば、絶好の投資チャンスを得られたことになります。
2020年5月には、来期予想1株益は96円、PERは56倍にまで上がり、株価5340円となりました(分割修正後の実際の株価は1330円)。
この約4年間で1株益は2・2倍の拡大でしたが、PERは3・3倍に拡大し、掛け合わせて株価は7倍になりました。
この事例のように高成長企業が実際に高成長を続けると、その株が人気化してPERもかなり高くなる傾向があります。
かりにPERが高くならなくても、業績がしっかり期待通りに伸びてくれた分の株価上昇は実現した可能性が高いですが、投資家からの評価や人気が上がったことでPERが上がり、株価上昇は一段と拡大したわけです。
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/