給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全――成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

PERを使った2つの投資戦略―(1)安定成長が続きそうな会社をPER15倍以下で買うPhoto: Adobe Stock

安定成長が続きそうな会社の場合、
PER15倍以下なら割安感は強い

 安定した成長が続きそうな会社の場合、PER15倍以下なら割安感は強いといえます。事業内容が自分にとってわかりやすくて魅力的であり、財務面にも特に問題がなければ、その株を買うことを検討してみましょう。

 くら寿司の事例を見ていきましょう。会社四季報2014年3集(6月に発売)の記事を見てください(下図)。

 当時の社名は「くらコーポレーション」となっています。同社は低価格回転ずしのチェーン店を展開していますが、低価格の回転ずし業態は外食の中でも人気が高く、その中でくら寿司はあきんどスシローとともに業界内で2強体制を全国的に固めているところでした。

 くら寿司は値段の割においしいこと、メニューの豊富さ、ITやロボット・機械を駆使した効率経営などを強みとしています。休日などは家族連れでにぎわい、1時間待ちはあたりまえという状況で、店を作れば業績が伸びていくという状況でした。

 上図の会社四季報を見ても、そうした状況を反映して順調に業績が伸びています。

 こうした会社の強みや人気の状況にもかかわらず、PERが12~13倍というのは、かなり割安感が強かったといえます。

 1株益は15年10月期予想で169円、この時の株価は2040円でPERは12倍です。

 18年5月には、1株益260円(18年10月期予想)、PER32倍となり、株価は8340円まで上昇します。

 1株益は1・5倍の伸びでしたが、PERは2・7倍に上昇し、掛け合わせて4倍以上の株価上昇となりました。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/