41歳スタートアップ経営者が「大学院に行くしかない」と考え実行した理由写真はイメージです Photo:PIXTA

1500人以上がフルリモートワークで働き、総合人材サービスを展開する株式会社キャスターで取締役CROを務め、「『40代で戦力外』にならない!新・仕事の鉄則」の連載も好評の石倉秀明氏。このほど慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程の入試に合格し、4月から、院生として若い世代に交じって勉強を始めたという。スタートアップの経営陣がなぜ今、大学院で学ぶのか、何を学ぶのか、入試対策はどうしたのかなど、そのリスキリング計画の全容をうかがった。(取材・構成/ライター 奥田由意)

「ふわっとした判断」の
根拠を明らかにしてみたい

――4月から大学院の修士課程で学ばれています。スタートアップの経営陣の石倉さんが、なぜ今このタイミングで、大学院で学びたいと思ったのですか。

 もともと一からきちんと学ぶことに興味がありました。「リスキリング」「学び直し」という言葉がありますが、それは既にスキルを持つ人が新しいスキルを身に付けるとか、一度学んだ人がもう一度別のことを学ぶという意味ですよね。でも、僕は、大学時代にアルバイトばかりしていて、一度もしっかり学んでいないと思ったので、学び直しではなく一から学ぼうと思っていた。

 ビジネスでは、さまざまな数字を使って意思決定をしていますが、よくよく考えると勘と経験に頼っているんですよね。数字は見るけれど、その解釈や、どの数字をそろえるかなどは、時間のない中で、手元にあるもの、集められるものに限っていて、その中で判断してきた。それで困ったことはないし、実際のビジネスでは、あるもので次々判断していく能力は不可欠です。でも待てよ、なんだか、雰囲気で考えていることが多いな、すごく「ふんわり」判断している、そういう決定を、何らかの根拠に基づいてできるようになりたいと思うようになったんです。

 世の中の統計で出ている数字は、そのまま信じてはいけないものが多い。相関なのに因果と言っているのはまだいいほうで、相関関係すら怪しいものもたくさんあります(笑)。たとえば、仕事ができる人はレスが速い、と言われたりしますが、本当にそういう因果関係があるのか。因果が逆かもしれないし、全然関係ないかもしれない。リアルに会って仕事をしたほうが、生産性が上がるという人も多いですが、それは感想にすぎないのではないか。リモートワークをしていると、どういう人がリモートワークに向いているかと問われるのですが、それも仮説はあるが実はよくわからない。

 そういった、根拠がないことや、自分が仕事で経験して、仮説として持っていることの因果関係を明らかにするのが面白そうだと思いました。慶應義塾大学大学院の政策・メディア研究科とシステムデザインマネジメント研究科の両方に合格したのですが、政策・メディア研究科の中室牧子先生が教育経済学のご専門で、因果推論という手法を使って、データや統計を使って物事の因果関係を明らかにしている。これが、自分の興味に合致したので、そこで学ぶことにしました。

――経営者が大学院進学を目指すことには、どんな意味がありますか。

 僕は、意思決定をしている人ほど勉強しないとダメだと思っています。日々新しいことがいろいろ出てくるので、分からなかったら正しく意思決定できるはずない。