「50代のリスキリングは地獄」現役コンサルが“30代までが期限”と体感した理由写真はイメージです Photo:PIXTA

ANA、住友商事、ダイキンなど、大企業が50代ビジネスパーソンのリスキリング制度を次々と導入しようとしています。「再学習することで新たなスキルを手にして50代、60代はさらに別の活躍をする」。そのような天国のような未来が手に入ればいいのですが、全員にというのは難しいかもしれません。実は、私はリスキリングの期限は「30代まで」ではないかと思うのです。その理由を実体験からお話ししましょう。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

50代のリスキリングブームは
“会社のお荷物”を減らすため

 50代ビジネスパーソンのリスキリング制度を、大企業が次々と導入しようとしています。ANA、住友商事、ダイキンなど、中高年の再教育に力を入れる事例が増えている背景には、2021年に改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったことがあります。

 私もちょうどいま60歳で、同世代の仲間と会うとだいたいいつも再就職の話になります。本人談でいちばん好ましい雰囲気のケースが「給料が減るけれども同じ会社に再雇用される」というパターンで、私の周囲では再雇用期間は65歳までというケースが多いように見受けます。肌感覚ではありますが、70歳までの延長雇用はいまのところ、まだ努力義務の範囲内のように感じます。

 ただ、この努力義務はいずれ義務に格上げされるでしょう。日本社会全体の高齢化と、社会保障費の限界を考えれば、政府の視点で見れば70歳までは国民に働いてもらわなければならないのは自明です。

 大企業の側の事情としては、まだ努力義務のうちにリスキリング制度をいくつか試していきながら、「本当の意味で使える高齢者」をどう作り出すかが課題です。

 もし、70歳までの就業機会確保が「義務」になったら企業経営に影響が出ます。