米国発のサブプライムローン問題に端を発して、世界中で景気悪化の嵐が吹き荒れ、今年は「100年に一度の大不況」と言われるほどの津波が数多くの企業へ押し寄せている。

 そのインパクトはすさまじく、金融、自動車、電機、流通、建設・不動産など、あらゆる業界で減収減益に陥ったり、倒産したりする企業が相次いでいるのが現状だ。

 「好不況の波は資本主義の宿命」とはいえ、個々の企業業績を調べていくと、同じ業界であるにもかかわらず、業績好調の企業と不調の企業との「格差」が拡大しているケースが見受けられる。

 その要因をひとことで言えば、「経営戦略の差」といったところだろうか。たとえ経営環境が悪化しても、経営戦略にブレのない企業は好業績を維持し、景気悪化によるリスクを最小限に留めることができるようだ。一方で、経営戦略に芯が通っていない企業は、不況の波をもろに受けて、事業そのものが立ち行かなくなる怖れさえある。

 一口に「業績の悪化」といっても、冒頭で述べた景気の波とは別に、「企業固有の要因」による面も大きいようだ。

 企業にとって、それほど重要な経営戦略の土台となるのは、いうまでもなく「常日頃から会社の財政状態や収益基盤を強固なものにしておくこと」にある。未曾有の大不況を生き抜き、体力を蓄えながら、来たるべき景気回復期に「ダントツの勝ち組」として躍り出るために、確固とした経営戦略が望まれる。

 そこで必要となるのが、「研ぎ澄まされた分析能力」である。ところが実際には、市場から厳格な経営管理能力を期待されている上場企業の経営者でさえも、「経営分析に明るいとは言えない」のが現状のようだ。

“不況シンドローム”に
有効な処方箋はないのか?

 そこでこの連載コラムでは、現在の「企業情報開示制度」をフルに活用しながら、毎回さまざまな業界や企業にスポットライトを当て、そこから浮かび上がる「病巣」をえぐり出し、「どこに問題があるのか」を徹底分析して行くことにする。

 ケースによっては、個々の企業の分析結果を基に、同じ業界に属する企業が抱える固有の問題点や改善点にも触れながら、「どうしたら勝ち残れるか」という処方箋をアドバイスする予定だ。

 そのため当コラムでは、今まで誰も思いつかなかった筆者オリジナルの経営分析、管理会計、ファイナンス理論のノウハウを展開して行くつもりだ。企業関係者の多くは「えっ! うちの会社ってそうだったの?」と驚かれるかもしれない。また、読者各位にとって、これから策定すべき経営戦略の一助になれればと考えている。