「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(取材・構成:田中裕子 初出:2023年1月6日)

【すごいですね!】ほめられたときの「感じいい返し方」「残念な返し方」の差【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

謙遜するとどう見られるか?

──ほめられたときに、つい謙遜してしまいます。チャンさんは評価されたときやほめられたとき、意識していることはありますか?

 内向型かつアジア人として、とてもよくわかるお悩みです。

 私も仕事に対するポジティブなフィードバックをもらったとき、それが自分の成果であっても「チームメイトの誰々のおかげです」と答えていました。注目されるのを避けたかったし、そもそもほめ言葉をもらえるほどのことはしていないと心から思っていたのです。

 ところがあるとき、家族のように接してくれているある上司から、「あなたはあまりに謙遜しすぎる。ありがたく受けとりなさい。そうじゃないと、能力がないのに評価されている人間だと思われるよ」とアドバイスをもらいました。

 このとき、謙遜することでネガティブな印象を与えることがあると知り、態度をあらためようと考えるようになったのです。

感じよく一言で返せばいい

『「静かな人」の戦略書』にも書きましたが、謙遜したり、自分の立場はもっと下だとアピールするのは、責任から逃れられて楽な部分もあるのですが、それではまわりに貢献できません。

 アメリカ人のマネジャーに、「あなたは『すみません』と言いすぎだ」と注意されたこともあります。自分は価値ある人間だと表明して、もっと毅然と振る舞いなさい、と。

 そのとき言われてもっとも心に刺さったのが、「あなたはアメリカで活躍しているアジア人のマネジャーです。あなたが遠慮したり萎縮したりすることで、若いアジア人のメンバーもそう振る舞わなければならないと考えるし、ほめられなくてもいいと思ってしまうでしょう」という言葉でした。

 このとき、自分がどうするのが心地良いかより、若いアジア人のロールモデルとして相応しい振る舞いをすることを優先させよう――ほめ言葉をもらったら、感じよく「ありがとうございます」の一言で受け入れようと決めたのです。

 いまでもほめられると、内心「いやいや、そんなことはありません」と萎縮してしまいます。けれどその態度によって、いいことは何も起こらないと理解するようにもなりました。

 きれいなお花を受けとったとき、「いりません」ではなく「ありがとう」と言うように、ほめ言葉を素直に受けとる。そういう意識を持ち、言葉にすることで、少しずつ慣れていくしかないのです。