「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(取材・構成:田中裕子)
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うるさい「高圧的な相手」を感じよく黙らせる上品な一言Photo: Adobe Stock

「しかし」ではなく「そして」を使う

──高圧的な態度に出られたり、強い言葉を投げかけられたとき、思考停止やパニックになってしまいます。こういう人と接するときに気をつけるべきことを教えてください。

ジル・チャン:デリケートな内向型にとって、感情的な人とやりとりするのはとてもハードルが高く、疲れることです。そんなシチュエーションに遭遇したら、まずは一歩退いて、自分のスペースを確保しましょう。そして「この人はなぜこんなに高圧的な物言いをしているのか」「この人は何を成し遂げたいのか」を考え、どう話し合えばいいか戦略を立てるのです。

 一歩退き、戦略を立てたら、次のステップは「自分のペースに相手を巻き込む」です。相手の陣地で、相手の勢いに飲まれて戦ってはいけません。一緒になって声を荒らげるのは、とくに内向型人間にとっては悪手です。

 自分のペースを取り戻すには、「伝え方」がポイントになります。たとえば、「おっしゃっていることはよくわかります。そこで私から追加させていただきたいのですが……」という言い回し。

 But(しかし)は使わず、And(そして)で返すことで、できるだけ相手の意見を否定しないようにします。「それでいうと」「ですから」といった肯定の言葉も有効です。

 このような言葉を発することで自分のペースを取り戻せますし、「私はあなたとこの問題を一緒に解決しようとしている」「相違点はあるけれど決して戦っているわけじゃない」と理解してもらうことで、同じ土俵に立てるはずです。

冷静な議論をするための方法

 私自身、プレッシャーが高い場面ではナーバスになってしまうタイプなので、まずはいったん退くようにしています。

 たとえば、チーム内でうまく合意形成できないとき。そのまま会議を続けるのではなく、一度解散してあらためて文章を共有し、そのドキュメントに意見を書き込んでほしいと伝えています。

 この方法には2つのメリットがあります。

 1つ目が、考えを文章にして書き出すことで、いたずらに感情的にならず、冷静に考えられる点。

 2つ目が、落ち着いたトーンで書かれた論理的な文章を読むことで、それぞれの意見の違いだけを比較できる点です。

 こうして「いったん退く」時間を経てミーティングに戻ると、おどろくほど建設的で落ち着いた議論ができるのです。

心身を疲れさせないために

『「静かな人」の戦略書』にも書いていますが、大前提として、内向型人間は「自分のエネルギーを守ること」を第一に考える必要があります。

 ストレスの高い状況に追い込まれると、心も体も疲れきってしまいます。私もつい、「自分のせいではないか?」「あらかじめ避けられたトラブルではないか?」とぐるぐる考えて込んでぐったりしてしまいます。

 ですからストレスフルな状況に陥ったときは、まずその環境から離れ、気持ちを落ち着けることを意識してください。オフィスを出てコンビニに行ったり、リモートワークの日だったらシャワーを浴びたりしても構いません。考えることをいったんストップしてリフレッシュしてから、あらためて戦略を立てていくのです。

 カオスな状況がいつまでも続いて、心身が疲弊しないよう、スピーディで適切な問題解決を目指しましょう。
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