「中国偵察気球事件」後
緊張状態が続く米中関係
習近平第3次政権が本格始動して2カ月がたとうとしている。この期間、「ゼロコロナ」策が解除され、国がリオープンに向かっている背景も作用し、中国は積極外交を展開してきた。
サウジアラビアとイランの国交回復を北京で仲介したり、ロシア、ウクライナ双方と接触したり、マクロン仏大統領を中国で盛大にもてなしたりと、ウクライナ戦争がいまだ停戦しない国際情勢下で、自らの影響力を誇示しつつ、昨年低迷した中国経済の回復に向けてできることは全部やるという姿勢が伝わってくる。
そんな中、中々動きださなかったのが米中間の外交である。実際、新政権が正式に発足した3月の全国人民代表大会を跨いで、米中関係は不安定で緊張した局面が続いてきた。1月末から2月上旬にかけて発生し、予定されていたブリンケン国務長官の訪中延期の引き金にもなった「中国偵察気球事件」が尾を引いている。
中国政府は自国の気球が「強烈な偏西風の影響を受け、操縦がうまくいかず、誤って米国の上空に侵入してしまったことに対して遺憾の意」を示した。だが、その後、米軍がバイデン大統領指示の下、中国が「民生用の飛行船」と主張するそれを撃墜すると、中国側の立場はかたくなになり、断固たる反対を示し、仮に米国側が同様の動きをすれば、中国軍がそれを撃墜する姿勢をあらわにした。
あの時点で、米中間には相当程度の緊張が走り、状況次第では一触即発の場面も想定された。全人代前のことだ。
全人代閉幕後も、中国は米国への警戒と批判を解かなかった。4月5日、台湾の蔡英文総統が米カリフォルニア州でマッカーシー下院議長と会談、中国側は外交的に猛烈に反発しつつ、軍事的には、昨年8月のペロシ訪台時同様、台湾を包囲する形での大規模な軍事演習を行った。初の国産空母「山東」を台湾の東側、すなわち日本周辺に派遣する形での実戦的演習である。