今年3月にサウジアラビアとイランを仲介し、外交関係を正常化することに成功した中国。ロシアとウクライナの和平仲介にも名乗りをあげるなど、これまでの内政不干渉の姿勢から一転、国際的なプレゼンスを高めている。そんな中国が特に注力している進出先とは――。(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)
プーチンへの逮捕状の
効力はあるか
増田 中国の習近平国家主席がロシアを訪問し、プーチン大統領との首脳会談に臨みました。
池上 オランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)が3月17日にプーチンへの逮捕状を出してから、初めての首脳会談です。プーチンの容疑はウクライナ占領地域からの子供の拉致、監禁など。普通なら「容疑者」となった相手に会うのは躊躇われますが、習近平には関係なかったようです。
増田 中国はICC条約を批准していませんからね。
池上 実は米国も批准していない。日本は批准していますから、プーチンが来日したら逮捕してICCに差し出さなければなりません。
増田 逮捕状によってプーチンの行動が制限される可能性が指摘される一方、首相のオルバンがプーチンに好意的なハンガリーは、批准国でありながら「プーチンを逮捕しない」と明言しています。
池上 習近平が3月20日から22日までロシアを訪問したのに対し、岸田文雄首相が3月21日にウクライナを電撃訪問しました。日中のトップが対立する戦争当事国のトップと同時期に会談するという、実に対照的な状況が生まれました。
増田 岸田首相はあえて時期をぶつけたと思いますか。
池上 実際には、国会の日程からして「広島でのG7(先進7カ国)サミット前に訪問できる時期はここしかない」と判断したのでしょう。しかし、習近平は「自身の訪ロにぶつけられた」と感じたかもしれません。
増田 岸田首相はウクライナのゼレンスキー大統領に、日露戦争の時代に人々が「ロシアを召し捕る」という願掛けを行ったという由来の「必勝祈願しゃもじ」を手土産として渡しました。一方、習近平は前もって「12項目から成る和平案」を提案した上でプーチンに会いに行っています。ここでも日中の対応は対照的です。