小学校での英語必修化から3年、英語嫌いが増えて成績が二極化した理由この春、小学3年生に配られた「外国語」のテキスト。最初は日本語以外にも言語があると知るところからスタートする(撮影/編集部・深澤友紀)

 小学校で英語が必修化されて3年。中学卒業までの学習内容は、劇的に増加した。しかし英語の力がつくどころか、英語嫌いが増えているという。AERA 2023年5月15日号より紹介する。

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 現在の小学校英語は、ざるで水を受けるような状態だ。この影響を受けるのは、中学1年生の英語教員だ。

 小学校で英語力の定着を図ることができないなか、中学の教科書は「小学校で習った」ことを前提として執筆されている。単語も本文の量も激増しているのに加え、これまで高校で習っていた文法事項が中学に降りてきている。しかし授業時間は週に4コマと変更はない。

すべて英語で授業する

 東京都の区立中学で、1年生を担当する50代の英語教員は言う。

「be動詞と一般動詞を同じユニットで扱ったり、違う形の疑問文が同時に出てきたりするので、生徒は混乱していると思います」

 東京書籍の英語教科書「NEW HORIZON」の「Unit 1」の内容を見ると「be動詞(am、are)とその疑問文、一般動詞とその疑問文、canとその疑問文・否定文」、「Unit 2」は「isの疑問文・否定文、what・who・howの疑問文」となっている。かなりのハイペースだ。しかも、これらをすべて英語で教えなければいけないという。新「中学校学習指導要領」には、「授業は英語で行うことを基本とする」と明記されたからだ。

「オールイングリッシュで文法を教えるのは本当に難しい。一度、日本語でまとめて文法の授業をしたら『先生わかったよ!』と生徒が喜んでくれました」(区立中学校英語教員)

 3年前に退職し、現在、公立中学校で英語の時間講師として教壇に立つ吉岡潤子さんは語る。

「小学校での英語教育が始まり、大きく変わったのは中1の最初の授業です。『Do you like English?』と聞くと、『No!!』という大きな声が上がるようになりました。小学校で英語嫌いになって、中学に上がってきているのです」