子どもたちが生きる数十年後は、いったいどんな未来になっているのでしょうか。それを予想するのは難しいですが「劇的な変化が次々と起きる社会」であることは間違いないでしょう。そんな未来を生き抜くには、どんな力が必要なのでしょうか? そこでお薦めなのが、『世界標準の子育て』です。本書は4000人を超えるグローバル人材を輩出してきた船津徹氏が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を解説しています。本連載では本書の内容から、これからの時代の子育てに必要な知識をお伝えしていきます。

世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

あらゆる一流に必ず共通する「成功要因」

 これまでの連載で、小学生からは、「根拠のある自信」を育てるために習い事をさせるべきだとお伝えしました。

 そして、始めた習い事は途中でやめさせず、10年単位で継続させることが重要だともお伝えしました。

 というのも、「根拠のある自信」をより大きくしてくれるのが「継続」だからです。

「小学1年生から高校卒業まで水泳をやりきった!」「6歳から高校まで13年間ピアノをやった!」など、努力を継続してきた子どもは、他のことも継続できる「粘り強い精神」を身につけることができます。

 ビジネス、学問、スポーツ、音楽、芸術、あらゆる分野の一流に「成功の要因を教えてください」と聞けば、返ってくる答えは一つです。

「継続すること」。

 言わずと知れたバスケットボールの神様マイケル・ジョーダンは、高校生の時、バスケットボール部のトライアウト(代表チームの入部テスト)を受けて落とされています。

 失望したマイケルは、バスケットボールをあきらめようと思いました。実はマイケルは、野球も高いレベルでやっていたので、野球で勝負しようと思ったのです。

 しかしマイケルの母親は、やめることを許しませんでした。

「もっと練習してうまくなりなさい! そしてコーチに見る目がなかったことを思い知らせてあげなさい!」と説得したそうです。

 母の言葉を受け、マイケルは二軍チームに入ってバスケットボールを継続。チームメイトの誰よりも練習に励み、どんな弱いチームが相手でも決して手を抜くことなく、常に集中力を持ってプレーに臨んだと言います。

 そんな挫折を経て、彼は歴史に名を残す名プレイヤーとなったのです。

 マイケルはのちに、「一度やめると、やめることが習慣になる。だから決してやめてはいけない」という言葉を残しています。

 決してあきらめない、やるべきことをコツコツとやり続ける、壁にぶつかったら他の方法でやり続ける。それでもダメなら、また方法を変えてやり続ける。

 このような「やり抜く習慣」は、子ども時代の過ごし方が極めて重要です。

あきらめグセの3つの原因と、解決方法

 一方、勉強、人間関係、習い事など、何に対してもうまくいかない子どもは、「ムリ!」とすぐにあきらめるのが特徴です。

 そんな「あきらめグセ」の原因と対策は次のとおりです。

 1)自信の不足──手出し口出しをせずに見守る
 2)成功体験の不足──子どもの意思で選ばせる
 3)ルーティーンの欠如──日々の繰り返しを重視し生活習慣を改善する

 1と2についてはこれまでの連載で紹介しましたので、ここでは3の「ルーティーン」について説明をしましょう。

「ルーティーン」とは、同じことの繰り返し。これを子どもに意識させるには、何よりも「生活リズムの改善」です。

 あきらめグセがついている子は生活リズムが乱れているケースが多いのです。

 生活の乱れは、必ず子どもの精神を不安定にします。その結果、物事に集中して向き合うことができなくなります。

 寝る時間、起きる時間、食事の時間、宿題の時間、遊ぶ時間、運動する時間をできるだけ一定にして生活リズムを安定させる。

 両親がルーティーンを意識して実行させるだけで、今までよりもはるかに集中して物事に取り組めるようになります。

日々のささいな積み重ねが大きな自信をつくる

 日本人初のシングルスとダブルス同時世界トップ10入りを果たした元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんは、現役時代テニスのために行なうルーティーンが毎日33種あったそうです。

 身長163センチ、体重55キロという体格は女子テニス界でも決して恵まれているとは言えません。

 そんな杉山選手がケガや病気によるツアー離脱に見舞われず17年間も世界のトップでプレーできたのは、呼吸法、食事の献立、ウォームアップ、ストレッチ、クールダウン、マッサージなど日々のルーティーンをコツコツと繰り返してきたからなのです。

 高校受験、大学受験、就職、結婚、転職、独立。人間はいくつもの「大きな選択」をして成長していきます。

 多くの人はその時々の「選択」によって人生が決まると考えていますが、本当に人生を決定づけているのは「日々のささいな積み重ね」です。

 子どもの場合は「石の上にも十年」です。何か一つ、コツコツと10年継続することができれば、子どもは大きな自信を得ることができます。

 成功するか否か、勝つか負けるか、一番になるかどうかではなく、「努力を続けたか否か」が問題なのです。

 子どもが「部活をやめたい」、「習い事をやめたい」、と言っても簡単にやめさせてはいけません。親は「継続の大切さ」を教え、子どもを励まし続けてください。