この20年で時代は大きく変わったが、今後20年の変化は、その比ではない。思いもよらない変化が次々と起きるこれからの社会では、「たくましさ」、「地頭のよさ」、「社交性」が常に求められるのだ。「世界標準の子育て」では、4000名のグローバル人材を輩出してきた著者が、世界中の子育ての事例や理論をもとに「未来の子育てのスタンダード」を紹介していく。
自分と向き合い、より良い選択とは何かを問う
ティーンエイジャーに「考える力」の重要性を伝えるキーワードが「選択」です。
進路の選択、行動の選択、「自分にとって良い選択は何か?」という問いを常に心に留めて生活するように子どもにアドバイスしてください。
この習慣があると、周囲に流されそうになった時、不本意な選択をしそうになった時、子どもがふと立ち止まって考えるようになります。
「親の選択に従ってきただけだ」と言う子どももいるかもしれません。
しかし、親に従うという「選択」をしたのは他でもない自分であることを伝えてください。
進学はもちろん、キャリアやその後の人間関係……子どもはたくさんの選択をしていかなければなりません。
より良い選択をするには、日々の姿勢が重要です。自分はこれまでどんな人生を送ってきて、何を大切にしてきて、今後はどうしていきたいのか。
この自分と向き合う作業をしておくと、いざという時も選択がしやすくなります。
アメリカの名門大学が重視すること
「あなたの今までの人生について本を書くとしたらタイトルは何ですか。またその理由を述べなさい」
エマーソン大学
「あなたのつくったYouTubeビデオが100万ヒットしました! そのビデオ内容について述べなさい」
リーハイ大学
「あなたはホワイトハウスに招待されました。そこで行なうスピーチ原稿を書きなさい」
ノースカロライナ大学
「もし人類の発明を一つだけ取り消せるとしたら、何を取り消しますか」
ブランデイス大学
「科学者と芸術家が人種問題について話をしています。どんな会話がなされているのか書きなさい」
ハンプシャー大学
「あなたという人間を定義してください」
バブソン大学
「あなたはたった今300ページの自伝を書き終えました。217ページ目を提出してください」
ペンシルバニア大学
……これは、アメリカの大学の入試問題(エッセイ)です。
アメリカの大学受験は、年に4~5回行なわれる「共通学力テスト(良い点を取れるまで何回受けても構わない)」、学校の成績、先生の推薦状、課外活動やボランティア参加、そしてエッセイ内容を総合的に評価して合否決定をします。
特に、難易度の高い大学ほど「エッセイ」を重視しています。これにより、受験者の伸びしろや人格を判断するのです。
エッセイを書くことは、自分と向き合う作業です。
500~1000単語という限られた文字数で、自分はどんな人間で、何を考え、これからの人生をどう生きていきたいのかを表現する。
思考のトレーニングとしてはこれ以上にない高度なものです。
子どもの強みを伝え、社会体験を積ませる
残念ながら日本にはエッセイ教育がありませんから、エッセイの代わりに、子どもがどんなことに興味があるのか、将来どんな道に進みたいのか、子どもの「強み」や「興味」をどうしたら活かすことができるのか、親子で進路について話し合う機会を持ちましょう。
医療に興味があるのであれば、職場体験をさせてあげたり、医療関係者と話をする機会をつくったり。コンピューターに興味があれば、ゲームやアプリ開発のワークショップ、サマースクールなどに参加する機会を。教育に興味があれば、学童保育のボランティア、子ども向け塾でのアルバイトや手伝いなどを経験させてください。
これは、親が子どもの人生にレールを敷くということではありません。
子どもが「本当にやりたいことを見つける手伝い」を、親の力を使って最大限サポートするということです。
社会には、実際に体験してみなければわからないことがたくさんあります。その経験をティーンエイジャーの時に積ませてあげるのです。
選択で子どもが迷っている場合は、親が子どもの「強み」や「長所」を具体的に伝えてあげてください。
「人に優しいこと、人の話を聞いてあげること、共感力があるのは素晴らしいことだよ」
「まわりを引っ張っていく力がある、リーダーシップがあるのは特別なことだよ」
「手先が本当に器用だ。それは他の人には簡単にマネできないんだよ」
「チャレンジ精神があるね。変化を怖がらないというのは特別な才能だよ」
「あきらめないというのは人にとって一番大切な力なんだ」
このように「強み」や「長所」を伝え、子どもが自分の個性を活かすためにどうしたらいいのかを考えさせるのです。
大学受験、大学生活、就職といった大きな岐路において、自分らしい人生を自分の意思で選択するには、それまでに子どもの中に「自分はどんな人間で」「どんな人生を歩みたいのか」を認識してもらうことが大切です。
この作業を、ティーンエイジャーのうちにぜひ体験させてあげてください。