新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIES、くら寿司、カッパ・クリエイトの「すし」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
「迷惑客」だけではなく
大減益や赤字が悩みの種に
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のすし業界3社。対象期間は2022年11月~23年3月の直近四半期(くら寿司は22年11月~23年1月期、その他2社は23年1~3月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・FOOD & LIFE COMPANIES(スシロー)
増収率:9.7%(四半期の売上収益753億円)
・くら寿司
増収率:10.4%(四半期の売上高513億円)
・カッパ・クリエイト
増収率:8.8%(四半期の売上高178億円)
23年のすし業界では、悪質な顧客がスシローやくら寿司での迷惑行為を撮影した動画がSNSで拡散されるなど、企業イメージの低下に直結する問題が多発している。
この“すしテロ”の影響で、FOOD & LIFE COMPANIESの時価総額は一時、168億円も吹き飛んだ。
そうした状況下で、すし業界の大手3社はいずれも四半期増収率がプラスで着地した。中でも、くら寿司は2桁増収だ。
だが、利益面に目を向けると、また別の構図が見えてくる。
FOOD & LIFE COMPANIESは黒字を死守したものの、第2四半期累計の営業利益が前年同期比45.3%減、最終利益は同35.1%減と大幅に減少した。
くら寿司とカッパ・クリエイトは、営業損益・最終損益がいずれも赤字に沈んでいる。
各社の減益要因をひもとくと、必ずしも「迷惑客」が業績悪化を招いたとは言い難いことが分かる。では、不振の要因は何なのか――。
次ページ以降では、「迷惑客」による被害が大きく報じられたスシローとくら寿司を中心に、3社の現状と増収率の推移を詳しく解説する。