いつも他人と比べてしまう」「このままでいいのか、と焦る」「いつまでたっても自信が持てない…」。仕事や人生に悩んでしまった時、どう考えればいいのでしょうか。『機嫌のデザイン』の著者であり、数々の名言がTwitterで話題となった、プロダクトデザイナー・秋田道夫氏の「毎日を機嫌よく生きるためのヒント」を紹介します。

「調子が悪い」と感じたとき、仕事のスイッチを入れ直す方法Photo: Adobe Stock

いつもと同じように手を動かしてみる

─調子が悪い時にはどう対処されていたのでしょうか。

その質問は、若い頃に後輩のデザイナーから聞かれたことがありました。

たしか「調子のよし悪しとは関係なく、普段通りに絵を一枚まず描くようにしています」と答えたと思います。

─絵というのはデッサンやスケッチですね。

そうですね。

とにかく、いつもと同じように一枚描いてみる。描いているうちに調子が戻ると思います。

実際のところわたし自身は「調子のよし悪し」を感じたことがないんです。

もちろん風邪気味で「今日はだるいな」と感じたとしても「デザインのスイッチ」が入ると関係がなくなってしまいます。

というかまわりを見渡しても、調子の変動がなく、いつも淡々としている人が長く生き残っているような気がします。

─変動の幅を抑えるためのコツはありますか。

自分のテンションを上げ過ぎず、平常を保つ意識を持つということでしょうか。

たとえば、ホテルのバイキングに出かけて、いつも以上にお皿に料理を取る人がいますが、わたしはそれほど多くは取りません。

盛り付けの美しさを重視しているのもありますが、「せっかく食べ放題なのだから」とスイッチを入れて食べ過ぎることはナンセンスだと思うのです。

比較的コストパフォーマンスのいいローストビーフなんかを選びながら、本当に食べたいものだけを適量だけ。

自分で自分をコントロールできる範囲を維持するという感覚を忘れないようにしています。

最近、事務所を引っ越しました。

本を整理していて出てきた、十五年前に台湾で講演をした時に撮影された写真がここにあります。

もちろん今よりは若くてキレキレな顔をしていますが、そこに笑顔はありません

たしかに仕事はできそうに見えるかもしれないけれど、あまりいい感じはしないと自分で感じました。

それに比べるとニコニコとした、それこそ「機嫌のよい」今のほうがいい顔をしているかもしれないなと、ちょっと嬉しくなりました。

─たしかに比べてみると、より柔らかい表情になっていらっしゃいます。

たぶん当時は「機嫌のよし悪しに価値がある」ことに気がついていなかったと思います。

今はなんといいますか、「ズレて」いない。

自分できちんとコントロールできている感覚があります。

(秋田道夫著『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』から一部を抜粋・改変したものです)