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人の命の本質とは何か。死とは何か――。人生のさまざまな事象を「図解」という思考ツールを使って捉え直す、平井孝志著『人生は図で考える』(朝日新聞出版)の中から、一部を抜粋してお届けします。
人の命の本質とは
人生はバトンリレーです。
そして人間は死ぬその日まで、インプットとアウトプットを続けます。外部からの刺激に応え、食べては排泄し、吸っては吐くという呼吸動作で生きていく。死の直前までインプットとアウトプットを繰り返すのが、人の命の本質です。このような人間の特性を捉える二つのキーワードを紹介したいと思います。
一つは、「自己組織化現象」、もう一つは、「散逸【さんいつ】系」です。
あまり聞きなれない言葉かもしれません。それぞれ説明します。
「自己組織化」とは、全体をコントロールする仕組みを伴わないランダムなもの同士が、自律的な構成要素間の相互作用によって構造や秩序を生み出す現象です。難しいですよね。わかりやすい例を挙げると、雪の結晶、鳥の群れ、経済変動パターン、そして生命。これらすべて自己組織化現象です。何かしらの命令を下している存在がないにもかかわらず、雪の結晶は美しい造形を持ち、鳥の群れは優雅に舞い、経済は波打ち、生命は躍動します。不思議なことに、司令塔が存在しないのに、創発的に秩序が生まれているのです。
たとえば、鳥の群れ。大空を横切る渡り鳥の群れを想像してみてください。大きく分けて三つの相互作用があの優雅な動きを決めています。
1 他の鳥や障害物と一定の間隔を取るように動く
2 周りの鳥と速度と方向を合わせるように動きを調整する
3 群れの重心に少し近づくように動く
こうした相互作用があるだけで、群れをつくるルールのような命令系統はどこにも存在しません。
人間という生き物も、何十億年もかけた壮大な進化の先っぽに存在しています。単細胞から多細胞へ、脊椎動物から哺乳類へと自己組織化していったのです。誰かが(たとえそれが神様でも)、トップダウン的に「こうあれ!」と命令したとしても生み出すことのできない驚異的な秩序の現れです。生きて在ることそのものが、そもそも貴重な存在です。
二つ目の「散逸系」は、前述の自己組織化現象において、動的な安定を指し示す言葉です。インプットとアウトプットをし続けながら、特に動的に安定しているものを表します。ノーベル化学賞を受賞したイリヤ・プリゴジン(1917〜2003)が定義したもので、ダイナミック(動的)でありながら、ステイブル(安定)である「Dynamically Stable」という概念です。
わかりやすい例を挙げましょう。沸騰したヤカンのお湯です。火からの熱量(インプット)を得て、湯気を通した熱量(アウトプット)を出し続けることによって、ヤカンの熱湯は、渦を描きながら安定するパターン(対流)を形づくります(図5-5)。








