鏡を見る女性(デンタルケア)写真はイメージです Photo:PIXTA

「ちょっと血が出ただけ」で済ませてしまいがちな、口の異変。しかしそれが、健康寿命を大きく損ねる可能性がある。実は、口の不調が脳や血管の不調につながるという研究があるのだ。いま知っておきたい、歯と健康の意外な関係とは?※本稿は、水口俊介『からだの「衰え」は口から 歯と健康の科学 健康寿命を左右する口のケアの最前線』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

歯周病が血液を通じて
全身に悪影響を及ぼしていく

 歯周病が恐ろしい病気である理由の1つとして、慢性炎症であることが挙げられます。

 これは常に体内で細菌の感染が続いている、あるいは原因となる細菌を保有していることを示します。

 そして、歯周病は口の中の細菌による炎症ですが、結果として、その影響は口の中だけにとどまらず、細菌の発する毒素や細菌自体が血流を通じて全身に運ばれ、身体の各所で悪さをするのです。

 たとえば高齢者の中には、心臓の弁の動きが悪く、心臓内の血流が不規則になって疣腫(いぼのようなもの)ができやすくなるケースがあります。

 このとき、歯石除去などの外科処置によって一時的に血流中に細菌が入ってしまうと、感染性の疣腫を作ってしまい、致死率の高い感染性心内膜炎になってしまいます。

 そのため、細菌性心内膜炎のリスクの高い人(人工弁の使用者や心臓に先天異常がある人)には、抜歯や歯石除去などの一時的な菌血症になる可能性のある処置の際、事前に抗菌剤を服用してもらい、その血中濃度が高くなってから処置を行います。