「生きることに意味などない。ただ…」ブッダが教える究極の幸福論とは?ブッダが教える究極の幸福・安穏とは、慢を根絶することによって現れる境地である。理性を働かせ、慢を徐々に退治していこう(写真はイメージです) Photo:PIXTA
*本記事は本の要約サイト flier(フライヤー)からの転載です。

おすすめポイント

 人生には不安がつきまとう。なんの不安もなく生きている人間などいないだろう。

 不安をコントロールするために、さまざまなアプローチがある。その中でも古くからあるのが、仏教である。本書はスリランカ上座仏教長老であるアルボムッレ・スマナサーラ氏が、仏教の教えの中でも特に心の動きに注目し、そのメカニズムを解説したものだ。

『心配しないこと』書影『心配しないこと』 アルボムッレ・スマナサーラ著 大和書房刊 1540円(税込)

 仏教と聞いて身構えたり、「自分は無宗教だから」と敬遠したりする人もいるかもしれない。しかし、本書を読むと、仏教とは人の感情や心の動きを解き明かす、心理学や哲学的な側面も持ち合わせているということがよくわかる。その教えは仏教誕生から2000年以上経った現在でも十分通用する普遍性を持つ。

 本書では、「わからない」ことが不安を増長させると説いている。心の動きや仕組みを観察し、理解することで、感情の暴走は食い止めることができる。また、2000年以上も前の理論が矛盾なく人の心の動きを解明していることが単純に新鮮で、興味深くもある。

 日々を平穏に過ごしたいと願う人はもちろん、仏教哲学の入門書としてもおすすめしたい。本書はこれまでにない「仏教」との向き合い方に気付かせてくれるはずだ。仏教の教えは古臭いものでは決してなく、現代を生きる私たちの悩みにも丁寧に応えてくれる、極めて今日的な訓示に満ちている。シンプルなタイトルとは裏腹に、刺激的な読書体験を提供してくれる一冊となるだろう。(千葉佳奈美)