新型コロナウイルス禍が落ち着き始め、企業業績への影響も緩和されてきた。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった難題がいまだに日本企業を苦しめている。その状況下でも、企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はINPEX、ENEOSホールディングス、出光興産の「エネルギー」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
エネルギー3社が2桁増収も
かつての水準からは鈍化
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のエネルギー業界3社。対象期間は2022年11月~23年3月期の四半期(3社いずれも23年1~3月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・INPEX
増収率:19.2%(四半期の売上高5785億円)
・ENEOSホールディングス
増収率:11.9%(四半期の売上高3兆6814億円)
・出光興産
増収率:10.1%(四半期の売上高2兆2450億円)
エネルギー業界の主要3社はいずれも、前年同期比で2桁増収を達成した。これまで本連載で解説してきた通り、その要因は原油価格の高騰と円安によるプラス効果である。これらが追い風となり、ENEOSホールディングスと出光興産は「8四半期連続」で増収を達成中だ。INPEXは22年12月期第3四半期に会計方針を変更し、それによって会計の連続性が途絶えているが、他の2社と同じく原油高によって大幅増収が続いていた。
だが、各社の業績を押し上げた原油高は22年夏をピークに下落基調に転じ、足元でも落ち着きを見せている。そのため、冒頭で示した3社の四半期増収率も、実はかつての勢いが失われている。
例えば22年4~6月期の四半期増収率を見てみると、INPEXは140.7%、ENEOSホールディングスは59.8%、出光興産は69.3%と驚異的な水準だった。当時の四半期増収率に比べると、23年1~3月期は成長がかなり鈍化していることが分かる。
それでも第3四半期までの“貯金”を生かして、3月期決算のENEOSホールディングスと出光興産は、23年3月期の通期決算で4割前後の増収を果たした(INPEXは12月期決算)。
一方、この2社は大幅増益となった前期と比べると利益面で苦戦しており、うち1社は純利益(通期累計)が前期比で約7割の大幅減益に陥った。
その企業とはどこか。また、「原油高バブル終焉」が迫る中での、各社の23年度(23年12月期/24年3月期)の通期業績予想とは――。次ページで、各社の増収率の推移と併せて詳しく解説する。