急増する原油生産量
エネルギー株に警鐘
原油価格が再び、1バレル=100ドルに迫ることはあるだろうか?(石油輸出国機構〈OPEC〉加盟国とロシアなどの産油国で構成する)「OPECプラス」による4月の「ショック」減産が実行され(6月上旬には協調減産を2024年末まで1年延長することに合意)、世界の余剰供給が押しつぶされると、しばしば冒頭のようなシナリオ――ないし一段の高値――を懸念する向きが台頭する。
しかし、エネルギー関連株の強気派は要注意だ。カルテルの生産量の割り当ては、厳格ではない。世界のエネルギー株は今後、劣後していくと考えた方がよいだろう。
22年序盤にロシアのプーチン大統領による卑劣なウクライナ侵攻がエネルギー市場を揺るがした際、ガス不足や原油相場急騰への懸念が高まった。アジア諸国では壊滅的な輸入コスト上昇、欧州には致命的な冬の停電など、世界各地に困難が迫るとされたのだ。日本では昨夏の熱波が電力不足懸念をあおり、電気コストは高騰した。かくして、エネルギー企業の利益や株価は高騰を見せた。
だが、その後は市場の力が取って代わり、価格を押しつぶした。原油は22年3月のピークからドル建てで約4割下落。アジア天然ガス(円建て)は一時より8割ほども下がった。欧州はと言えば、大幅増産でエネルギー不足懸念は急速に薄れている。
OPEC、米国、さらにはロシアのおかげで、液体燃料の世界生産量は昨年4%超増加した。22年の生産量は「増えた」のだ。欧州向けロシア産原油は、制裁やボイコットを経て中国とインドに向かった――大幅な値引きの下で――両国のロシアからの輸入は過去最大となった。
いわば、価格は企業や市場におけるシグナルだ。22年には、原油の世界生産量やインフラ開発、供給再編の増加を促した。世界の原油・ガス採掘リグ数は前年比で1割超増えた――これは主に、米国のシェールブーム再燃によるものだ。
そして、エネルギー企業は非常にもうけている――同セクターの営業利益は昨年、世界的に倍以上となった。日本のエネルギー企業ですら、国内株式市場に占める割合はわずかだが、コロナ制限の逆風にもかかわらず株価は2割超上昇した。このブームは世界の採掘地域での雇用や商業活動を促した。地方政府の税収も増えた。まるで、自由市場の魔法ではないか!
だが、こうした増産の流れは、生産量よりも価格に敏感な反応を示すエネルギー株に警鐘を鳴らす。常に先を見越す市場は、増産で供給が膨らむと知っているのだ――これが価格上昇を阻むのだと。OPECプラスが「大幅減産」しても、エネルギー株の燃料が不足する理由は何か。ポートフォリオにこのような株をどのように組み込めばよいのか。以降、これらについて説明していこう。