再建途上にある日本航空(JAL)の危機が期末に向けて新たな山場を迎える。2008年3月に主力取引先の銀行や商社など15社を対象に優先株発行による約1500億円の第三者割当増資を実施したが、その優先株が初年度から無配になる可能性が強まっているのだ。

 JALは企業存続のために大規模な資金調達が不可欠だった昨年度末、高配当を条件に大型増資にこぎ着けた。代償の年間配当予定は総額約60億円。増資による経営基盤の強化で再建を軌道に乗せて支払う目算だったが、世界的な景気後退によって航空業界は旅客数・貨物輸送量共に急減。

  08年度最終利益は新たな特別利益でも捻出しない限りは目標の130億円から赤字レベルへの下方修正が避けられない状況に陥った。利益が確保できなければ普通株同様に優先株も無配が避けられず、優先株を保有する銀行団は今後の融資姿勢を厳しくせざるをえない。

 航空需要の落ち込みは底が見えない。加えてJALなど日系大手は燃油価格の高騰時に2~3年先までかなりの比率で燃油価格のヘッジを行なってきたため、価格下落のメリットが09年度に入っても十分に享受できない。

 利用者に対する燃油サーチャージは燃油価格の変動に応じて1月以降引き下げが始まっており、収益面で見ると価格下落が足を引っ張ることになる。そんななかでJALは09年度に520億円の社債償還を控える。

 資金繰りの悪化を回避すべく、水面下では日本政策投資銀行による航空業界への緊急融資の検討が始まっている。国土交通省の主導により、これまでも米同時テロ発生後の旅客数減少など非常時に業界への緊急融資は実施されてきた。

 今回検討される額は2000億円規模。配分の一案は「JALが1500億円、全日本空輸が500億円」(関係者)。JAL救済色が濃く、この融資案の行方が同社の来期の資金繰りを左右する。

 危機の火種は資金面以外にもある。優先株への配当ができない場合の経営責任を追及する声が社内で出ているのだ。今下期の業績悪化は不測の外部要因が大きいことは明白で、西松遥社長は続投の意思があるとされるが、お家芸の社内抗争が燻っている。

 国交省事務次官OBで前・成田国際空港(NAA)社長である業界の大物、黒野匡彦・NAA特別顧問をトップに担ぎ出そうとする一派もあるというから穏やかではない。

 下方修正が出されるであろう2月6日の第3四半期決算発表以降、火消しに追われるあわただしい期末となる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  臼井真粧美)