ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジンによる軍事クーデターが、未遂に終わった。ロシアに残された「プリゴジンの仲間たち」の処遇はどうなるのか。「アルマゲドン(最終戦争)将軍」の異名を持つセルゲイ・スロビキン将軍逮捕の真相は。ベラルーシに亡命したプリゴジンは再起するのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が懸念する、ロシアで現在進められている「改革」とは? 佐藤氏が全て解き明かす。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
プリゴジンはベラルーシに亡命
反乱の「仲間たち」はどうなった?
民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジン氏による軍事クーデターは未遂に終わり、プリゴジン氏はベラルーシに亡命しました。では、反乱の「仲間たち」はどうなったのでしょうか。
プーチン大統領は、6月26日22時10分(モスクワ時間=日本時間27日4時10分)にクレムリンから、ロシア国民へ呼びかける演説を行いました。その中に、注目すべき部分があります。
ここで〈反乱の企画者たちは、連携を失っていた〉と語った点が重要です。
私はこの連載の前回配信で、モスクワ国立大学哲学部科学的無神論学科で同級生だった親友のアレクサンドル・カザコフ氏が、このクーデターをどう見ているか紹介しました。政治評論家として活躍しているカザコフ氏は、国政与党「公正ロシア、真実へ!」の幹部会員(非議員)でもあり、クレムリン(大統領府)の内部事情を含むロシア政治を熟知する人物です。
カザコフ氏の見解の中に、プリゴジン氏にはモスクワに「仲間たち」がいて、同時に蜂起して「プーチン大統領の解任、ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の逮捕を実現するつもりだった」という指摘がありました。
すると6月28日、「モスクワ・タイムズ」(ロシア語電子版)が、ロシア国防省に近い情報筋2人の話として、ロシア軍のセルゲイ・スロビキン将軍が逮捕されたと報じました。ロシア軍ではセルゲイ・ショイグ国防相と並ぶ最高位の将官です。