ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるプリゴジン氏は、なぜ軍事クーデターを起こしたのか。驚くべきクーデターのシナリオと誤算、プリゴジン氏とその「仲間たち」を待ち受ける末路を、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解き明かす。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
プーチン大統領の性格や価値観を
プリゴジンは読み誤った
ロシアの民間軍事会社ワグネルを率いるエフゲニー・プリゴジン氏による軍事クーデターは、6月23日に始まり、わずか1日で未遂に終わりました。蜂起の目的はショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の罷免だったとされますが、かなえられませんでした。
プリゴジン氏としては、最前線でウクライナ軍との過酷な戦闘に従事してきた自分たちの要請なら、軍幹部や官僚が反対してもプーチン大統領は耳を傾けてくれると信じていたのでしょう。「プーチンの料理人」と呼ばれて親密さをうたわれたプリゴジン氏ですが、プーチン大統領の性格や価値観を理解できてはいなかった。読み誤った。あるいは正規軍との関係で、そう信じるしかない状況に置かれていたのかもしれません。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は、プリゴジン氏を反乱罪に問わず、ワグネルの戦闘員に対しても責任を問わないと述べました。この先ワグネルは解体され、正規軍に組み込まれていくでしょう。
ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介を受け入れ、プリゴジン氏はベラルーシへ移動しました。しかし私は、これで一件落着とはいえないと捉えています。