半導体の新盟主である台湾TSMCは、生産拠点を急ぎ日米欧へと分散している。一方、かつての盟主・米インテルが巻き返しを狙い始めた。6月21日、ファウンドリを事実上切り離すと発表。また、韓国サムスン電子もファウンドリの強化に取り組んでいる。半導体の地殻変動は、日本にとっても重要なチャンス。この機会を逃してはならない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
米インテルがファウンドリを再編へ
半導体産業の地殻変動が加速している。背景には、半導体の生産拠点が台湾や韓国などアジア諸国・地域に偏在していたことがある。生産拠点が特定の地域に集中することは、地政学的リスクの観点からも好ましくない。
また、人工知能(AI)向け半導体チップ需要が急増しており、半導体の戦略物資としての重要性が高まっている。そのため、わが国や欧米諸国は、こぞって自国での半導体製造拠点の展開を狙っている。
こうした主要国の政策転換が、半導体産業の構造転換を加速している。それに伴い、現在の半導体産業の盟主である台湾積体電路製造(TSMC)は、生産拠点を日米欧へと分散すべく直接投資を増やしている。
一方、かつて盟主であった米インテルが、ここへ来て巻き返しを狙い始めた。6月21日、半導体の受託製造事業(ファウンドリ)を事実上切り離す組織改編を発表した。また、サムスン電子も生産調整を進めつつ、ファウンドリ事業の強化に取り組んでいる。
こうした変化は、わが国の半導体関連企業にとっても重要なビジネスチャンスになる可能性がある。むしろ、この機会を逃してはならない。