写真:半導体写真はイメージです Photo:PIXTA

世界の半導体メーカーの業績が悪化している。不足感から一転、利上げの長期化や景気後退への懸念もあり、半導体市況の「谷」は深まるだろう。ただ、中長期的には「戦略物資としての半導体」の重要性は増すはずだ。目先の市況悪化に耐えつつ設備投資を積み増し新しい製造技術を確立できるかが、メーカーの優勝劣敗を分ける。次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの行方やいかに。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

世界の半導体メーカーで業績悪化

 足元、世界の半導体メーカーの業績悪化が鮮明だ。背景には、コロナ禍の巣ごもり需要の反動でパソコンなどの需要が減少していることに加えて、一時、半導体不足から在庫を積み上げ過ぎたことなどがある。短期的に世界の半導体の需給が改善するとは考えにくく、当面、厳しい状況が続くとみられる。

 米欧の金融引き締めは長引くことも予想され、世界的な景気後退の懸念も一段と高まりやすい。景気の強弱によって需要が大きく変動するのが半導体市況であり、需要の「谷」が一段と深まることが懸念される。

 また、先端分野での米中対立の先鋭化も、半導体市況を下押しするだろう。そうした状況下、半導体関連の設備投資を維持できるか否かで、長い目で見た世界の大手半導体メーカーの競争力の差は鮮明化しそうだ。

 それは、わが国の半導体産業が再び成長する重要な機会になり得る。わが国では産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう。