半導体を制する者がEVを制す#13Photo:MirageC/gettyimages

4年ぶりとなるメモリー不況で半導体企業の業績に陰りが見えている。米国による半導体対中規制の強化もビジネスに悪影響を及ぼす中、生き残る企業はどこなのか。ダイヤモンド編集部では、最新決算の数字を駆使して半導体・電子部品の「存亡」ランキングを作成。特集『半導体を制する者がEVを制す』の#13では、八つの独自指標を用いて乱世で生き残るお宝企業を炙り出した。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

TSMCもサムスンも急落
市場減速でも生き残る半導体・部品企業は?

 わが世の春を謳歌してきた半導体に試練が訪れている。スマートフォンなど民生品向けの半導体需要の落ち込みにより、メモリー市況が悪化。2023年の半導体市場は4年ぶりのマイナス成長となる見通しだ。

 決算数字は正直だ。世界最大の半導体ファウンドリー、台湾積体電路製造(TSMC)の決算では、23年第1四半期(1~3月)の純利益は2069億台湾ドル(約9100億円)となり、前四半期と比べて30%も落ち込んだ。

“逆張り戦法”で、業界の投資削減トレンドに逆らってまでも果敢に投資することで知られる韓国サムスン電子ですら、4月に減産方針を表明。半導体市況には暗雲が垂れ込めている。

 さらに、日本の半導体関連産業が業績悪化の要因になると懸念しているのが、米国による対中輸出規制の強化だ。実際に規制対象となっている半導体製造装置のメーカーなどを中心に、中国事業の構成比の高い企業は警戒感をあらわにしている。

 市況悪化と地政学リスクへの対応、そして熾烈な顧客開拓競争を乗り切るのはどの企業なのか。

 ダイヤモンド編集部では、設備投資や研究開発投資を機動的に実行できる「財務力」と「マネジメント力」を備えた企業を将来性の高い企業として評価。半導体・電子部品98社を対象に、「存亡」ランキングを作成した。

 ランキングを作成するに当たって、重要視したのは以下の4種類のデータ(八つの指標)だ。

●企業の基本的な稼ぐ力を表すデータ…企業を変革するにも「先立つもの」が必要であり、本業でキャッシュを稼いでいる企業を高く評価した。
指標:年平均売上高成長率、営業利益率

●将来への投資意欲を表すデータ…現状の事業領域に甘んじることなく、変化を恐れず新しい領域への野心を燃やしているかを端的に表しているのが、研究開発費にかかわる指標で評価した。
指標:研究開発費、売上高研究開発率、フリーキャッシュフロー

●事業の拡大意欲を表すデータ…製造業にとって、設備投資の増減は生命線。設備投資をしっかり実施している企業を高く評価した。
指標:設備投資額、売上高設備投資率

株式市場における評価を示すデータ…株式市場における期待値が高い企業を評価した。
指標:株価純資産倍率(PBR)

 上記の八つの指標を用いて、企業の実力値とポテンシャルを総合的に評価した。それでは、次ページで「米中分断でも生き残る98社」ランキングの結果を見ていこう。