米国が今年リセッション(景気後退)に陥る可能性は後退している。ではリッチセッション(富裕層を中心とする景気後退)はどうかと言えば、まだ続いている。インフレの高止まりと連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにもかかわらず、米経済の歩みは着実だ。雇用は増え、経済は成長している。しかし多くの富裕層は、景気後退がすでに始まったと感じているだろう。米商務省は6月29日、1-3月期の国内総生産(GDP)成長率を前期比年率1.3%から2%に上方修正した。エコノミストの間では4-6月期のGDP成長率予測を引き上げる動きが相次いでいる。定義上、裕福な人は貧しい人と比べて裕福なのだが、それでも裕福な人々のほうがレイオフによる打撃が深刻で、物価上昇に見合った賃上げを確保することが難しく、昨年からの企業利益の低迷の影響を強く受けている。言い換えれば、景気の先行きが不透明な中、富裕層がより大きな痛手を被るという、リッチセッションの様相を呈していることに変わりはない。そして富裕層が相対的に支出を抑えることによる波及効果も出始めている。