インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
アジア・アセアン地域の投資ファンド候補
アジア・アセアン地域に投資するファンドの候補についても、10年以上の運用実績があり、長期の運用パフォーマンスが高いことなどを条件として選別しました。下図をご覧ください。
この表を見る際に注意していただきたいのは、4本のファンドはすべて資産クラスが異なることです。先にご説明したようにファンドの運用実績を評価する際は、同じ資産クラスどうしで比較する必要があります。ですから、これら4本をトータルリターンやシャープレシオで直接比較すべきではありません。
たとえば、アセアン株式に投資するファンドはパフォーマンスがさほどよくないように見えるかもしれませんが、アセアン株式という資産クラスの中で良好なパフォーマンスを残しているファンドであり、その点で評価されるべきなのです。
それでは、4本のファンドについて中身をチェックしていきましょう。
JPMアジア株・アクティブ・オープン
(JPモルガン・アセット・マネジメント)
このファンドは、日本を除くアジア各国の株式の中から、成長性があり割安と判断される銘柄に投資するファンドです。このファンドは過去10年のトータルリターンが年率10.05%で、カテゴリー平均を3.32ポイント上回る運用実績があります。シャープレシオは0.52で、カテゴリー平均を0.16ポイント上回っており、運用の効率性も高いと評価できます。信託報酬は年率1.68%です。
図は、「JPMアジア株・アクティブ・オープン」の組入上位国・地域を示したグラフです。中国が約3割を占め、次いで台湾、韓国、インドネシア、香港が組み入れられています。
DIAM VIPフォーカス・ファンド
「愛称:アジアン倶楽部」(アセットマネジメントOne)
主にVIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)の3ヵ国に重点を置いて、アセアン加盟国や中国、香港、インド等の日本を除くアジア諸国の株式に投資するファンドです。
このファンドは過去10年のトータルリターンが年率8.03%で、カテゴリー平均を1.80ポイント上回る運用実績があります。シャープレシオは0.43で、カテゴリー平均を0.07ポイント上回っています。信託報酬は年率1.87%です。
下図は、「アジアン倶楽部」の組入上位国・地域を示したグラフです。インドネシア、ベトナム、フィリピンの組入比率がそれぞれ3割程度となっています。
フィデリティ・チャイナ・フォーカス・オープン
(フィデリティ投信)
中国・香港の取引所に上場する中国企業、および活動の大半を中国で行う中国以外の企業の株式を投資対象とするファンドです。このファンドは過去10年のトータルリターンが年率9.51%で、カテゴリー平均を1.22ポイント上回る運用実績があります。シャープレシオは0.44で、カテゴリー平均を0.08ポイント上回っています。信託報酬は年率1.93%です。
中国については地政学的にさまざまな懸念がありますが、GDPで世界第2位の大国であることをふまえれば、サテライトで組入比率を高めるのも選択肢の1つです。中国株の比率を高めたい方にとっては、有力な選択肢になるファンドです。
新生・UTIインドファンド(SBIアセットマネジメント)
ムンバイ証券取引所、またはナショナル証券取引所上場のインド株式を投資対象とするファンドです。このファンドは過去10年のトータルリターンが年率18.99%で、カテゴリー平均を5.20ポイント上回る運用実績があります。シャープレシオは0.83で、カテゴリー平均を0.25ポイント上回っています。信託報酬は年率1.95%です。
インドは人口が14億人に迫り、2023~2024年にかけて中国を抜くと予想されているほか、2025年ごろにはGDPで日本を追い抜いて世界第3位に躍り出ることも予測されています。インドの成長に期待し、組入比率を高めたい方にとっては、このファンドが有力な選択肢になるでしょう。
(※本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。