マイナンバーカードにまつわるトラブルが相次ぐ。そんな中にあっても、政府は健康保険証とマイナンバーカードの一体化を目指す。2024年秋に現行の保険証を廃止にするなど、強引な手法に国民からは不安の声が上がる。これから何が起きるのか。特集『マイナンバーカードの落とし穴』の#1では、岸田政権の思惑に迫る。イトモス研究所所長の小倉健一氏は「岸田首相は筋金入りの増税論者。マイナンバーカードが増税の手段に使われるのは間違いない」という。(イトモス研究所所長 小倉健一)
現行の健康保険証の廃止
なぜ強行するのか
マイナンバーカード導入について、国民にはメリットばかりが強調されている。例えば、プッシュ型給付金。国家が国民の収入、財産、家族構成、病歴などを管理することで、対象世帯が申請なしで給付金を受け取れるようになるというものだ。
確かに、特別な証明などを用意しなくても助成金などを受けられる場面が出てくるかもしれない。しかし、政府にとって「与えること」が便利になったということは、同時に「取り上げること」も簡単になったということを理解しなくてはいけないだろう。何より気をつけなくてはならないのは、政府が国民の個人情報へと、常に、簡単に、アクセスできるようになってしまったことだ。
さらに政府は健康保険証とマイナンバーカードを一体化させることで、無理やり普及させようとしているように見える。
7月5日に加藤勝信厚生労働相が「G7(先進7カ国)各国の状況は、異なる行政分野に共通する個人番号制度を有した上で、個人番号を確認できるICチップ付きの身分証明書となるカードを健康保険証として利用できる国は、わが国以外はない」と発言したように、「マイナ保険証」はG7では日本独自のものだが、その進め方はあまりに強引だ。
7月25日には厚生労働省が「2024年秋の現行保険証の廃止以降に、転職などで保険資格が変わった場合、1年間の猶予期間を待たずに現行保険証が使えなくなる」(23年7月25日「読売新聞」)と明らかにしている。
任意であるマイナンバーカードを健康保険証と一体化してまで、強制的に国民に持たせる目的は何なのか。