総予測2023#93Photo by Yoko Suzuki

マイナンバーカード普及とマイナンバーの活用促進を推し進める国と、その動きに反対する人の対立が続く。だが、マイナンバー反対派・推進派とも、最も重要な論点を見逃しているという。特集『総予測2023』の本稿では、情報法の大家で個人情報保護法制に詳しい鈴木正朝・新潟大学教授が盲点となっているマイナンバーのリスクについて警鐘を鳴らす。

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

取り沙汰される「漏洩リスク」よりも
本筋で警戒すべきリスクが存在

 マイナンバーを巡る議論は、現状では推進派も批判派も的外れのものに終始している。

 批判派は国家による個人監視に反対する一方、「コロナ禍で貧困に陥った世帯の資産状況を把握して直ちに生活費を支給しろ」と矛盾したことを主張している。また、政府は特典ポイントの乱発やマイナンバーカードの保険証との一体化などでひたすら普及を推し進めるが、そもそも「なぜマイナンバーの活用が必要なのか」を明確に国民に示せていない。

 マイナンバーを有効に活用する必要はある。というのは、今の日本は、監視国家リスクよりも無管理国家リスクの方が大きいからだ。

 現状では、政府は特定の国民一人に社会保障費が幾ら支給されているかを個別に把握できていない。各社会保障のデータベースがそれぞれ個人情報保護の理由で分離し、名寄せができていないからだ。そのため、貧困層に30万円を給付する案は、貧困世帯の特定ができずにお蔵入りしてしまった。

 必要な支援を必要な世帯に迅速に届けるためにも、さらに今後、適切な給付を配分し、財源を有効活用して社会保障制度を維持するためにも、まずはこの状態を解消しなければならない。その手段としてマイナンバーが有効である、ということは間違いない。

 マイナンバーは民主党政権時に誕生し、その後、自民党政権にも引き継がれたが、基本的には与野党とも賛成の上で制度が作られてきた。マイナンバーそのものの必要性自体は全体が合意しているわけだ。

 だが、その活用の在り方や、リスクの捉え方についてはまともな議論がなされていないと考える。

 まずはっきりさせておきたいのは、マイナンバー自体は、すでに全国民に配布済みの個人識別子にすぎない、ということだ。

 注視すべきは、その背後のデータベース群にどんな内容が入力されているか、目的に応じた適正なデータが収集されているか、データの運用が正当なものであるか、だ。

 そして、マイナンバーで取り沙汰されるのは漏洩リスクばかりだが、本筋で警戒すべきはそれではないということも主張したい。

「国家による個人の監視強化につながるのではないか」という警戒の声が根強くある中、あの手この手でマイナンバーカードの普及と利用拡大を推し進める国。その隔たりが埋まらない一方で、本来警戒すべきリスクがないがしろにされている、と鈴木教授は指摘する。盲点となっているマイナンバーの本当の脅威について次ページで詳しく解説しよう。