数千万円だましとられた富裕層…元国税職員が心を鬼にして「追徴課税」したワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

お金で困ることのなさそうな資産家も、実はとんでもないお金のトラブルに見舞われています。特集『富裕層の「お金の大失敗」』の#3では、東京国税局の資産課税担当として多くの資産家を目にしてきた著者が、お金持ちの失敗事例を明かします。(元国税専門官 小林義崇)

お金持ちはうらやましいけれど……

 国税職員は、採用されて間もなく担当税目が決まります。職員の多くは法人税を扱う「法人課税」や、所得税を扱う「個人課税」の担当部署に配属されますが、筆者が配属されたのは「資産課税」を扱う部署でした。

 資産課税は、相続や贈与、不動産・株取引にかかる税金を主に扱います。言うなれば「資産家にかかる税金」を担当するため、資産課税の職員は他の職員よりもお金持ちに接する機会が多いのです。

 私自身は母子家庭で育ち多額の奨学金を背負って社会に出たということもあり、仕事で関わったお金持ちを「うらやましい」と感じることがありました。親から億単位の遺産を相続した人、不動産や株を売って数千万円もの利益を上げた人、自宅の頭金として両親から1000万円ずつ現金を贈与してもらった人――。そのような人たちを数多く目にしたからです。

 とはいえ、まったくうらやましくないケースに遭遇することも時にありました。申告書のチェックや相談対応の業務を通じて、「資産家だからこそ遭遇するお金のトラブル」があることを知ったのです。

 お金をたくさん持っているが故に、資産家が失敗したときの損失は大きなものになります。今回の記事では、国税職員の経験から印象に残っている失敗事例をご紹介したいと思います。

 今回紹介するのは、詐欺にあったお金持ちをおそったまさかの顛末です。