世帯年収1300万円・30代夫婦、7000万円マンション購入の絶頂から急転…売却不可避に陥ったワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

お金があれば、幸せになれる――と信じる人も多いでしょう。しかし、実際お金があるからこその苦労や悩み、トラブルなどに多く遭遇しているようです。成功体験ではなく失敗から教訓を得る特集『富裕層の「お金の大失敗」』の#1では、世帯年収1300万円の30代夫婦のマンション購入から学びます。(社会保険労務士 井戸美枝)

ペアローンで都内マンションを購入したが…?

 筆者はファイナンシャルプランナーとして家計の相談に乗っています。相談者の金融資産も人によってさまざまですが、最近特に多いのが、共働き夫婦のいわゆる「パワーカップル」の失敗です。

 そこで今回、皆さんと共有したいのは、私が相談を受けた、都内のマンションを購入した夫婦の危機についてです。

 2017年当時、夫Aさんの年齢は38歳、妻Bさんは32歳、結婚5年目の共働きの夫婦でした。

 夫のAさんは金融機関に勤めており、異動で各地を転々としていました。2017年に、東京の本社への配属が決まり、このタイミングで住宅の購入を決意したのです。将来子どもを持ちたいという希望があり、マイホームで子育てをしたいという思いも購入を後押ししたようです。

 問題は住宅の価格でした。現在ほどではないものの、2017年当時も都内の住宅価格はマンションを中心に値上がりしていました。夫妻の候補にも、かなりの高額物件が挙がっていたことを覚えています。

 半年程度かけてさまざまな物件を検討した結果、都内にある、約7000万円の築10年の中古マンションをペアローンで購入することになりました。中古マンションとしては高額になりますが、占有面積が広いうえ、駅からも近く、かなりの好物件でした。

 ご両親からの援助と夫妻が準備していた資金の合わせて1500万円を頭金として支払い、残りの約5500万円をペアローンで支払うことになりました。

 住宅ローンの返済期間は25年、ボーナス返済もありで、毎月の返済額は約17万5000円程度でした。

 当時の夫妻の年収は、合わせて約1300万円(夫800万円・妻500万円)。世帯の月収はおおむね87万円程度あったうえ、夫Aさんが昇給する見込みもありました。この返済額であれば問題ないだろうと筆者も考えていました。しかし、幸せの絶頂にある時には考えたこともない、想定外の事態に陥ったのです。