2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります(発売は8月2日)。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

【インボイス】飲食店経営者が大至急確認すべきことPhoto: Adobe Stock

飲食店経営者が知っておくべきこと

 飲食店を経営している場合、インボイス(適格請求書保存方式)に登録すべきでしょうか?

 事業をしている方が求めた場合に、インボイスに定められた請求書等を出す必要があります。飲食店が一般的に出すレシートも同様です。

 こちらがインボイスに登録していないと、そのレシートにインボイスの登録番号を載せることができません。その場合、お客様が困る可能性があります。そのお客様が納める消費税の負担が増える可能性があるのです。

 ただし、そうなるのは、そのお客様が事業をしている場合に限ります。もし飲食店にいらっしゃるお客様が、事業をしていない=消費者の方ばかりであれば、インボイスに登録しなくてもまったく問題ないということです。

 ただし、1100円(消費税100円)とレシートに表示している場合は、誤解を生む可能性があります。

 また、こちらがインボイスに登録していない場合、困るのは、一定の場合のみです。そのお客様が、原則課税という方法で納める消費税を計算する場合に限ります。原則課税を選ぶのは、一般的に2年前の売上が5000万円超の場合ですので、それなりの規模の方です。

 ご自身の店のお客様が、事業をしているか・消費者か、そして事業をしている場合、規模は大きいかどうかによって、インボイスに登録するかどうかが変わってきます。

 たとえば、大企業の社員の方がランチによくいらっしゃる場合、仕事の経費にしている可能性は低いでしょう。インボイスに登録しなくても問題ないと言えます。ただ、中には打ち合わせとして経費にしているケースもあるかもしれません。

 夜の会食として利用していただいている場合は、経費にしている可能性が高く、その方々の規模によっては、インボイスに登録しないと困る可能性があります。家族でいらっしゃる方がほとんどの場合は、経費にしていないでしょうから、インボイスに登録しなくても問題ないでしょう。

今すぐ確認すべきこと

 インボイスの登録する場合は、レシートの表記にも注意しましょう。飲食店の場合は簡易的な形式が認められています。

・インボイスの番号
・店の名前
・日付
・内容(軽減税率かどうか)
・税率ごとに合計した金額
・税率ごとの消費税額または税率

 これらがレシートに必要です。今使っているレジが対応しているか、対応できるかどうか、確認しておきましょう。

(本原稿は井ノ上陽一著『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』から一部抜粋・追加加筆したものです)