領収書が経費で落ちない恐れ、「インボイス制度」で会社員が注意すべきこと写真はイメージです Photo:PIXTA

今年10月1日より実施が予定されている「インボイス制度」。制度自体の是非を問う議論も白熱しており、免税されていた分の利益を失ってしまう個人事業主にとってはまさに死活問題だ。制度変更後も現状のままで影響の少ない職種は何か、また、ビジネスパーソンにはどのような影響があるのかなどについて税理士の齋藤和助氏に話を聞いた。(清談社 小森重秀)

インボイス制度の実施で
免税事業者が困る理由

 最近耳にする「インボイス制度」。普段の生活でも身近な消費税と関係の深い制度にもかかわらず、どのような変化が起こるのか知らないという人もいるかもしれない。「そもそも消費税に関する知識がなければ、インボイス制度について理解することは難しい」と話すのは、税理士の齋藤和助氏だ。

 そこで、事業者が消費税を納税するフローを簡単にまとめた(消費税は10%と仮定)。

 事業者Aが税込み660円の原材料を仕入れて、税込み1100円の商品として消費者に販売したと仮定する。事業者は、消費者から受け取った消費税100円から仕入れ先Bに支払った消費税60円を差し引いて、40円を税務署に納税するという流れだ。

 この“差し引き”のことを「仕入税額控除」と呼ぶが、前述の事業者Aが仕入れ先Bからインボイス(適格請求書)を受け取って「消費税を仕入れ先Bに支払ったと証明」できなければ、控除分の40円を差し引けず、事業者Aは消費者から受け取った消費税100円を全額納税する必要がある。

 つまり、インボイスを発行できない相手との取引は、事業者からすると損になるのだ。よって、インボイスが発行できる別の取引相手にくら替えすることも検討せざるを得ない。

「インボイスの発行には、消費税の納税義務がある課税事業者になる必要があります。前述のフローの例で言えば、事業者Aとしては仕入れ先Bに課税事業者になってほしいと考えます。この時、仕入れ先Bが消費税の納税義務を免除された免税事業者だった場合、インボイスを発行してもらえないからです」

 では、免税事業者か否か、どのような基準で区分しているのだろうか。