旅費交通費や会議費、備品費など、普段の仕事で使う経費は山ほどあるが、そこにもインボイス制度は影響がある。旅費交通費で言えば、3万円ルールや自動販売機特例など細かいルールがめじろ押しなのだ。特集『個人も企業も大混乱! インボイス&改正電帳法の落とし穴』(全15回)の#9では、それらのルールをフローチャートで解説する。(G&Sソリューションズ代表取締役、税理士法人G&Sソリューションズ代表社員、公認会計士・税理士 山田勝也)
インボイス制度の導入は
立て替えや経費精算にも影響あり
インボイス制度については、中小零細法人における問題点や個人情報の取り扱いなどがピックアップされがちであるが、実際に運用が始まった場合には、買い主側としてインボイス制度に直面する会社が圧倒的に多いため、今後はインボイス制度の開始に向けて各社の対応が本格化してくるだろう。
インボイス制度は、会社が顧客に対して請求書を発行する場合や、仕入れ先等から物品を購入する場合、サービスの提供を受ける場合に影響を受ける。そのため、議論の多くは顧客に対するインボイスの交付や、仕入れ先からのインボイスの入手、保存に関する論点に着目しがちである。
しかし、インボイスを入手するのは、単に商品等の仕入れに関する場面だけではない。従業員の立場としては、日常的に起こる移動や消耗品の購入のような経費の立て替え・精算業務についても、インボイス制度の影響を受けることになる。
従業員の立て替え・精算業務に関してのインボイス対応は各社が検討を進め、今後社内規程や方針が明らかになってくるであろう。本稿では従業員の立場から、立て替え・精算業務にインボイス制度がどのような影響を与えるのかを考えてみる。
まず、自社が消費税の納税義務を免除されている会社(免税事業者)である場合には、支払った経費について、支払額に含まれる消費税額をインボイスによって把握する必要がないため、インボイス制度への対応は不要となる。同様に、消費税の納税義務はあるものの、簡易課税の適用を受けている会社も、消費税額を把握する必要がないため、インボイス制度への対応は不要となる。
ただし、両者とも売り上げ規模の拡大とともに、免税点制度や簡易課税制度を適用できなくなることから、将来を見越して原則的な対応を従業員に求めてくる会社も出てくるものと想定される。
次ページでは、インボイス制度が導入されると、旅費交通費の精算や飲食費、備品消耗品費などにどのような注意が必要になるか、詳述していこう。