社長ひとりだけの会社が増えています。自由なスタイルで、場所や時間にとらわれず仕事をする「ひとり社長」。そんなひとり社長にも、悩みのタネがあるのではないでしょうか? その1つが経理です。めんどくさい、わからない、難しいetc。本連載は、そんなお悩みを解消するためのものです。著者は税理士の井ノ上陽一氏。「経費」から「決算」まで、経理の知識を網羅した『新版 ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります。「税理士顧問料が削減できた」「本当に税務申告が1人でできた!」と評判の1冊です。

社長は自分の給料をどう決めている?「5つのルール」とは?Photo: Adobe Stock

「社長の給料」、5つのルールとは?

 給料は、会社から見ると経費です。ひとり社長の給料は、自分自身で自由に決めることができます。つまり、経費を自由に増やせるのです(個人事業主の場合は、経費になりませんし、給料を自分に出すこともできません)。

 利益から税金を計算するため、「経費が増える=利益が減る」のは、課税する国から考えると、好ましくありません。当然、規制がかかります。社長の給料は、税金上、次のような規制があります。

①給料(役員報酬)の金額を変更できるのは、事業年度が始まってから3ヵ月以内(1月始まりなら3月末、4月始まりなら6月末)

②毎月定額

③給料の変更には、株主総会の議事録が必要

④社長へ賞与を出してもいいが、経費にはできない(原則、株主総会からひと月を経過する日までに届出書を出せば、その届出書の金額を賞与として出せる制度はあります)

⑤社長の配偶者は、役員でなくても、同じように規制される

 まとめると、「給料は年に1回だけ変えることができ、賞与は出せない」ということになります。給料計算上は、非常にラクです。

給料から差し引かれるもの

 会社員のときは、給料からいくらか差し引かれて振り込まれていたはずです。その差し引きを自分で計算しなければいけません。社長の給料から差し引くのは次の3つです。

・源泉所得税
・社会保険料(健康保険、厚生年金等)※加入している場合
・住民税 ※会社で天引きするようにしている場合

 社長といえど、「何でも好き勝手にできる」わけではありません。「社長の給料」には、このようなルールがあるのです。