勉強する子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

中学受験を志している子を持つ親御さんなら、一度は耳にした経験があるだろう中学受験塾・SAPIX小学部。同塾では、論理的な思考力と表現力、そして主体的に学ぶ姿勢の育成を教育理念に掲げ、多くの生徒たちを難関中学に合格させてきた。これまで10万人以上を指導してきたSAPIXだからこそ知っている、社会科ができる子に育てる家庭の教育メソッドとは? 本稿は、『10万人以上を指導した中学受験塾SAPIXだから知っている頭のいい子が家でやっていること』(佐藤智、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

社会科=暗記科目という思い込みはNG

「社会科は暗記教科だ」といった言葉をよく耳にします。

 しかし、本当にそうでしょうか?

 歴史分野にせよ、地理分野にせよ、覚えることが多いのは事実ですが、「覚えるだけ」ではなかなか社会科のおもしろさに気づけません。さらに、「学力の伸び」も期待できなくなります。SAPIX小学部で社会科を担当する加藤宏章先生は、「社会科において覚えることは、道具を得るためであって、目的ではない」と語ります。

 社会科は世の中をみる目を養う教科です。

 社会で起きていることを紐解いて「なぜ、こうなっているんだろう?」と考えていくには、多様な知識が必要になってきます。たとえば、物価上昇の問題ひとつとっても、その背景を知り、対策について考えるには、多くの知識をもとにした複合的な考察が必要です。つまり、知識を覚えることは、社会科の目的ではなく世の中で起きていることについて思考していくための手段なのです。

 では、社会科で必要な「思考力」を育てるためには、子どもとどんな関わり合いをしていけばいいのでしょうか。本稿では、社会科を学ぶことで伸びる能力や、社会科を得意教科にするために家庭で実践できることについて、加藤先生にお聞きしていきます。

 社会科を「覚えるだけ」で終わらせないために大事なことは、子どもたちの生活や体験と社会科での学びを結びつけることです。たとえばスーパーに行って「同じ商品なのに、なんで1週間前より値上がりしているんだろう?」と子どもに聞きながら一緒に考えてみる。旅行に行って、自分が住んでいる地域と何が違うのかを比較してみる。こうした体験と投げかけをセットにして積み上げることで、子どもたちは知識を活かして考えるようになっていきます。「考えるには知識が必要なんだ」「知識があることでみえる景色が変わるんだ」ということを実感すると、「単なる暗記」ではない社会科の見方ができるようになるのです。

 また、あえて「これが社会科の学び」と規定しなくても、日頃の生活が社会科の学びにつながっています。お手伝いのなかにも、地域活動のなかにも、テレビのなかにも、子どもたちの遊びのなかにも、社会科の学びはあふれています。子どもは日々発見や疑問を口にしていますから、大人に求められるのは、その疑問に寄り添って、考える素材を与えたり掘り下げたりしていくことです。必ずしも、答えを与える必要はありません。つまり、子どもたちの多様な経験を大事にし、そこでの子どもの発見を深め、広げていくことが重要なのです。