「低予算?」「手抜きじゃないか」――。アニメの流行に伴ってファンの目も厳しくなり、特定の作品や放送回がSNS上で「作画崩壊」だと集中砲火を浴びるケースが増えた。だが、劇場版『ONE PIECE』やTVアニメ『プリキュア』シリーズを手掛けた経験を持ち、書籍『アニメができるまで』を上梓した大塚隆史監督によると、批判されている全てのアニメが低品質とはいえないという。ファンの指摘がズレている場合と、作画が本当に「崩壊」している場合の両方について、プロ目線で原因を解説する。(執筆/フリーライター 堀田孝之、取材協力/アニメ監督 大塚隆史)
※本記事は2022年11月13日配信記事を再編集したものです。
SNSでたびたび炎上する
アニメの「作画崩壊」とは?
アニメにおける「作画崩壊」が、SNSでたびたび炎上する時代になった。
ここでいう作画とは、アニメに登場するキャラクターなどの絵を指す。そのクオリティーが著しく低いことを、視聴者が揶揄(やゆ)して使う言葉が作画崩壊だ。
視聴者による作画崩壊の指摘は今に始まったことでなく、古くは『鉄腕アトム』や『機動戦士ガンダム』などの一部のカットに違和感を持つファンがいた。
例えば『機動戦士ガンダム』ならば、妙にスレンダーなザクや、面長で寸胴なガンダムが登場する話(第15話「ククルス・ドアンの島」)は作画崩壊の例として有名である。
近年はSNSが普及したことで、視聴者が作画崩壊を指摘しやすくなり、その矛先が向くアニメが増えてきたのだ。
中には、あまりに悲惨な絵だったため映画料金の返金騒動が起こったり、製作側が謝罪してDVD版では絵が修正されたりなど、視聴者の指摘がごもっともな「ざんねんな作画崩壊」があるのは事実だ。
しかし、劇場版『ONE PIECE』やTVアニメ『プリキュア』シリーズを手掛けた経験を持つ大塚隆史監督は、ファンによる「作画批判」が過熱する近年の傾向に違和感があるという。
・視聴者に揚げ足を取られる「気の毒な作画崩壊」の実態
・揚げ足取りではない「本物の作画崩壊」の原因とは
・アニメ業界で「働き方改革」が進まないワケ