世界の電子機器業界は依然、新型コロナウイルス特需消滅による不振から抜け出せずにいる。調査会社カウンター・ポイント・リサーチによると、2023年4-6月期の携帯電話出荷台数は前年同期比8%減と8四半期連続で減少した。電子機器受託生産の世界最大手でアップルの主要サプライヤーである台湾の鴻海精密工業(フォックスコン)株を買うには、奇妙なタイミングに思えるかもしれない。
しかし、同社は興味深い立場にある。世界で大きな政治的・経済的シフトが起きていることが一因だ。
鴻海の株価は現在、かなり割安な水準にある。特に米国の基準ではそうだ。ファクトセットによると、12カ月先予想PER(株価収益率)は米S&P500種指数が約19倍なのに対し、同社は約10倍だ。周期的に見て23年下半期は厳しい環境になりそうだが、24年は大幅に改善する兆しが強まっている。コロナ特需終息による電子機器の世界的な在庫過多がようやく解消されつつあるようだ。コンサルティング会社の龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)によると、中国では現在、電子機器と機械在庫が売上高に対して減少傾向にある。一方、韓国のサムスン電子とSKハイニックスではメモリーチップ在庫がピークに達したもようだ。