「バーテン」はバーテンダー
の略語ではありません

  さらに、バックバーだけでなくカウンター上に酒が並んでいることもあるが、ボトルに勝手に触れてはいけない(心得その6)。ボトルは物によっては高価な資産であり、丁重に取り扱わなければならないもの。手の脂がつくのも見栄えが悪い。どうしても気になる場合は、やはり「ボトル、見せてもらってもいいですか」と一声かけるのがマナーだ。

 最後に蛇足ながら付け加えると、バーテンダーのことを「バーテン」と略して口にする人は多いが、これも避けたほうが無難である。というのも、バーテンという言葉は実は差別用語(心得その7)だとする説があるからだ。

 意外に思われるかもしれないが、「バーテン」とはバーテンダーの略ではない。バーテンダーという職業が社会的地位を得る以前、その日暮らしの自由人がこの仕事に就くケースも多かった時代に、フーテンとかけて生まれた“蔑称”なのだ。意に介さないバーテンダーも多いが、少なくともこちらは先回りして気を使い、「バーテンダーさん」とお呼びするのがワンランク上の客の在り方だろう。

 細々と講釈をたれてしまったが、以上のことを胸に留めながら、思い思いにこの世界を深掘りしてほしい。気の合うバーテンダーと出会えれば、さらなる酒の楽しみが広がること請け合いだ。