居酒屋や立ち飲み屋でわいわいやるのもいいけれど、時には落ち着いたムードのバーでしっとりグラスを傾けたい。酒好きを自認する大人なら、誰しもそんな憧れをお持ちなのではないだろうか。しかし、いわゆる「オーセンティックバー」というのはどうにも敷居が高いようで、敬遠する人も少なくない。初めてでもスマートに、楽しく過ごすための「心得」をお届けする。(フリーライター 友清哲)
「オーセンティックバー」とは
どんなバー?
オーセンティックバーの「オーセンティック」とは英語のauthentic、つまり「本物の」「正真正銘の」の意であり、酒に関する専門知識に長けたバーテンダーが立つバーを指している。しかし、筆者は都内でオーセンティックバーを10年経営した経験を持っているが、訪れる客はもともとバーに慣れた人ばかりで、一見客にはなかなか入りにくい雰囲気があるようだ。
というのも、「こういう店では何を頼んでいいかわからない」という声を頻繁に耳にしたからだ。なぜオーダーの仕方がわからないのかといえば、オーセンティックバーにはメニューのない店が多いことが一因だろう。
慣れた客ならバックバー(カウンターの向こうの酒棚)を見ながら、銘柄をバーテンダーに伝えて“指名買い”できるが、ラベルを見比べてもちんぷんかんぷんな人にとって、これは魔境以外の何物でもない。
また、ルールやマナーにうるさそうだと萎縮する人も少なくないはずだ。たしかにバーは大人の空間であるから、大声で話したり騒いだりするのはもってのほか。店によっては、短パンやサンダルでの入店はNGということもある(その場合は軒先にドレスコードが明記されている)。
逆にいえば、そうした最低限の良識さえ携えていれば、オーセンティックバーも恐れるに足らず。そこで僭越ながら、ビギナーがオーセンティックバーに挑戦する際に押さえておきたい「心得」をまとめてみたい。