一番売れてる月刊マネー誌『ダイヤモンドZAi』の人気No.1連載「マンガ 恋する株式相場!」の単行本第2弾が好評発売中! 今回はその『マンガ 恋する株式相場! 今から始める! 新時代の投資術』(ダイヤモンド社)から、新たなビジネスモデルに挑戦する芸能事務所の登場や、ファンクラブ運営など周辺事業の拡大が注目されている「アイドル株」をテーマに、本書の内容の一部をマンガとともに紹介する。
ジャニーズの起用見直しで
業界勢力図が変わる?
ジャニーズ事務所は9月7日に開いた記者会見で、故ジャニー喜多川元社長による元所属タレントらへの性加害を初めて認めた。新社長の東山紀之氏は謝罪。ただ、「ジャニーズ」という名称を変えないとした点などについて「対応が甘い」という指摘もある。実際、所属タレントを広告に起用していた日本航空、東京海上日動、アサヒグループホールディングスなど大手企業が、今後は起用しない方針を続々と表明している。
また、一部テレビ番組ではこれまで、ジャニーズと競合する男性グループの出演が少ないと指摘されてきた。たとえばBMSG所属の「BE:FIRST(ビーファースト)」や、LAPONEエンタテインメント所属の「JO1(ジェイオーワン)」などが、今後そうした番組にも出演する機会が広がると、一部で報じられている。こうした動きから、これから業界の勢力図が一変する可能性も十分に考えられるだろう。
韓国のBTSが所属するHYBE
20年に株式上場
一方でこの「ジャニーズ問題」が発覚する前から、新たな形の芸能事務所や周辺ビジネスは盛り上がりを見せつつあった。
2020年10月、世界的に人気のK-POPアイドル「BTS(防弾少年団)」が所属する芸能事務所「HYBE(ハイブ)」(旧ビッグヒットエンターテインメント)が韓国取引所に上場(証券コード:352820)した。公募価格13万5000ウォンに対し、付いた初値は2倍の27万ウォン。1時間後にはストップ高の35万ウォンまで上がり、時価総額は当時の日本円で1兆円を超えた。
2021年には、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデが所属する米国の総合メディア企業イサカ・ホールディングスを買収。K-POPアイドルの米国市場進出を促進する戦略を打ち出した。現在、株価は25万ウォン程度で推移。HYBEの株は日本でもSBI証券などで買うことができる。
素人もSNSで一気に有名に
芸能事務所の支配力が低下?
では、日本で株式を上場している芸能事務所はあるだろうか。まず挙げられるのはエイベックス(7860)とアミューズ(4301)の2社。以前は吉本興業とホリプロも上場していたが、どちらも上場廃止に。芸能人は薬物問題や女性問題が多く、管理が難しい上に、コンプライアンス上の問題もあり、芸能プロは基本的に上場に向かない体質と言われている。
上場すれば大きな資金調達が可能になるほか、社の知名度が上がり、所属タレントのステータスが上がるとも考えられるものの、仮に資金調達の必要性が小さければ、世間への体裁だけで上場する意義は薄いという指摘もある。
エイベックスの株価は上場直後の2000年、浜崎あゆみの全盛期で最高値の1万4350円を付けたが、株価はその後右肩下がり。コロナ禍の2020年4月には767円まで下がった。現在は多少回復し、1500円前後を付けている。
一方、アミューズはサザン・オールスターズ、福山雅治以降もPerfume、星野源など有力なタレントを次々送り出しており、株価は長期的には下がっていない。コロナ禍でサザンのライブ配信が50万人以上を集め、注目されて一時は株価が上がったが、現在は1600円程度で推移している。
ただ、現在は一般の人の歌がSNSでヒットしていきなり芸能人のような人気者になる事例も多い。また、元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3人による「新しい地図」がテレビに出演できなかったことで、2019年にジャニーズ事務所が公正取引委員会から注意を受けたことが明らかに。こうした背景もあって、芸能事務所は、これまで使ってきた強烈な支配力をタレントに行使しにくくなっている。
アーティストの多様なニーズに
合わせてマネタイズ
そんな中、業績を伸ばしているのがエムアップホールディングス(3661)だ。2004年に設立された携帯電話向け有料コンテンツの会社だが、2008年から始めたアーティストのファンクラブ運営事業が軌道に乗った。2012年に当時の東証マザーズ、翌年には東証一部に上場している。株価は長期的に右肩上がりで、現在も好調を維持している。
エムアップホールディングスがファンクラブを運営しているのは、大手事務所に所属していないコブクロ、あいみょん、GLAY、Official髭男dismや、ジャニーズや乃木坂を卒業した手越祐也、堀未央奈、生駒里奈といったタレントたち(2021年9月時点)。しかも同社は、ファンクラブだけでなく、Eチケットを販売したり、オンラインライブを主催したり、ECでグッズを販売したりしている。アーティストのニーズに合わせてさまざまなマネタイズを考えてくれる、「新しい形の芸能事務所」と言われている。
コロナ禍でも、既存の芸能事務所のファンクラブは会員数を減らしたところが多いが、エムアップホールディングスは扱うタレントの数が増え、業績も上がった。なお、エムアップのファンクラブ運営事業を担う子会社、ファンプラスの顧問には秋元康も名を連ねている。エムアップホールディングスは既存の芸能界ともうまく付き合っているのだ。
コロナ禍からの経済再開
今後の業界動向に注目!
こうした新しい形の芸能事務所としてほかに挙げられるのは、たとえばSUKIYAKI(3995)。2003年設立で、TSUTAYAのカルチュア・コンビニエンス・クラブの関連会社だ。ゆず、広瀬香美、中山美穂などのファンクラブを運営(2021年9月時点)。2017年から東証マザーズ(現グロース)に上場している。
また、2019年に上場したブシロード(7803)も有名だ。元々は2007年にカードゲームなどの製造販売会社として設立され、「響」という声優事務所を持ち、声優たちのライブ活動とその周辺ビジネスで成功した。そして、ブシロードが主に男子向けの事業の会社だとすると、女子向けのゲームやライブで稼いでいるブロッコリー(2706)も上場しており、注目だ。
コロナ禍で芸能事務所は収益が下がったものの、主に2023年からの経済再開で業績が回復傾向に向くことが期待される。冒頭で触れた通り、ジャニーズ問題に端を発する今後の業界動向にも目を向けながら、関連銘柄の値動きをウォッチしたいところだ。
※本稿は『マンガ 恋する株式相場! 今から始める! 新時代の投資術』(ダイヤモンド社)より一部抜粋、再編集したものです。
ホイチョイ・プロダクションズ
バブル時代の超名作『私をスキーに連れてって』など映画やTV、マンガで活躍。株関連の著書は『マンガでわかる株式投資! 女子高生株塾』『株、FX、世界経済がマンガでわかる!新女子高生株塾』『マンガ 恋する株式相場! ゼロからわかる! 投資入門』(すべてダイヤモンド社)。他のベストセラーに『見栄講座 ―ミーハーのための戦略と展開―』『東京いい店やれる店』『気まぐれコンセプト クロニクル』(すべて小学館)など。