この夏、金の価格が上昇し、史上初めて1g1万円を突破したことが大きな話題になった。純金積立などで金投資をしていた人はホクホクだろう。しかし、いざ売却して利益を得ようとすると、税金の問題を見落としていたことに気付く人は多い。今回は金投資の「賢い出口戦略」について解説したい。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
金を売ってもうかったら
税金が30%かかる!?
8月末、金価格が史上初の1g1万円を超えたというニュースが大きく話題になった。残念ながら私は金を保有していないが、読者の中には「持っている」人も少なくないだろう。これほど値上がりすると、持ち続けるか、せっかくだから売却して利益を手にしようかと悩むはず。
いつ売却するかはともかく、知っておきたいのは「税金」のことだ。今回は、金の売却益にかかる税金について、「純金積立」と、「現物のバー(いわゆる延べ棒、インゴットともいう)」の二つのケースで見てみる。
まずは「純金積立」から。
先日、同世代の友人(50代半ばの女性)と食事をした際、「20代からやっていた純金積立、毎月コツコツ積み立てていたのが、200万円以上もうかっているの」と、うれしそうに言う。
私が「良かったね!でも、税金には気を付けてね」と言ったところ、友人は「税金?」ときょとんとしている。すぐに「そっか、もうかった分に税金かかるよね。考えてなかった。どのくらい?」と聞かれ、次のように答えた。
「ざっくりの説明だけど、増えた分は、『譲渡所得』の対象で、厄介なのは他の所得と合わせた総合課税ってこと。つまり、給与の年収が高いと、金の売却利益も高い税率になっちゃうのよ。もうけの金額によっては確定申告が必要」
外資系企業で働く彼女の現在の年収は高く、給与にかかる税率は所得税が20%、住民税は10%で合わせて30%。純金積立の売却で得た所得にも税率30%が適用になると知り、目が点になっていた。
「もうかっている!」と喜んでいたのに水を差してしまい、ちょっと申し訳ない。お酒も入っていたので「詳しくは週末に電話で話そう」とその日は別れた。
実は、ファイナンシャルプランナーの筆者の元に家計相談に来る人の中にも「純金積立」をしていたり、「金のバー」を持っていたりする人がいる。積立期間や取得時期は異なるけれど、これほど金価格が上がっていると、今まで会った相談者の全員が含み益を抱えていたので、「金投資の出口戦略」を考えるのは私の中では重要課題なのだ。
そこで、これまでの経験に基づいて「賢い出口戦略」を解説しよう。