おすすめポイント
人間には誰でも疲れてしまう時がある。価値観が複雑化し、人とコミュニケーションを取らずに生きていけない現代社会においては、もはや当たり前のことと言ってもいい。誰でも落ち込むことは避けられないが、中にはうつのように立ち直れないほど重い状態に陥ってしまう場合もある。こういった時にはどうすればよいのだろう。
まず休むことが必要だ、というのが本書の主張である。幼児期に承認を得られなかった子供は心のうちに憎しみを蓄積しており、それゆえ自分が認められることに執着しているのだという。そこから解き放たれるためには、とにかく休み、そして自分が周囲に対して過度な奉仕をしていないか、そうした執着を利用されて搾取されていないかを点検すべきである。自分を欺くことは、思っている以上のストレスとなって襲いかかるのだ。
とはいえ、自分の行動を日頃から省み、心理的に成長できていない部分があるから注意しなくては――と冷静に分析して落ち込みを回避することは難しいだろう。調子を崩してからではなおさらである。
本書の著者は心理学の大家として数多くのベストセラーを出している加藤諦三氏である。本書ではうつになるメカニズムを解きながら、心が疲れた人への処方箋が記されている。
スキーの初心者は、まず雪の上で長い板を装着したまま安全に転ぶ方法を教えられる。落ち込むことが多いという人だけでなく、「自分は元気だから大丈夫」という人こそ、いざという時のために心の休ませ方を把握しておいてほしい。(池田明季哉)