父が奨学金をもらえたおかげで、僕たちは中流家庭になれた
第二次世界大戦に従軍した父は、退役後に復員兵援護法の奨学金で大学に進んだ。この奨学金によって、技術者や科学者、医師、教師などホワイトカラーの専門職の世代が誕生し、大量の中流階級が創出され、やがてアメリカ経済を世界のトップに押し上げた。裏返せば、この奨学金がなかったら、僕たち家族は中流家庭になれていなかったと思う。
父は40年間、こつこつと働いた。金を稼ぎ、税金を納め、地域社会でボランティア活動をした。生涯を通じて納めた税金は、政府が父の教育に投資した金額の少なくとも100倍に相当する。
中流家庭に生まれ育っていなかったら、僕が教育というすばらしい恩恵を受けることも、マイクロソフトという企業の成長に参加することもなかっただろう。そして、僕のような世代がいなければ、アメリカの経済成長もありえなかった。初等教育しか受けられず、読み書きもできなければ、アップルやボーイング、グーグル、スターバックス、ツイッターなど世界屈指の企業を設立することはまず不可能だろうからだ。
教育の持つインパクトを自分自身が体感してきたからこそ、僕は「すべての子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標が達成できると信じ、その目標に向かって走りつづけている。
ルーム・トゥ・リードは10年をかけて、僕たちのアプローチが有効であることを10カ国で証明してきた。さらに大規模で着実な成果が早急に求められていることは言うまでもない。これからの10年でもっともっと多くの子どもに手を差しのべたい。生まれてくる場所と時代と親に恵まれなかった子どもは、教育を受けることができない――その概念を覆すことを、これからもめざしつづける。
【新刊のご紹介】
あのロングセラーに待望の続編が登場!
ジョン・ウッド著『僕の「天職」は7000人のキャラバンになった』
四六判・上製・328頁ISBN:978-4-478-02289-4
ネパールの山奥、たまたま訪れた地元の小学校で“本のない図書館”に衝撃を受けたジョン・ウッドが、マイクロソフトの経営幹部職を辞して2000年に立ち上げたNPO「ルーム・トゥ・リード」。設立から10年以上が経ち、いまや数々の賞を受賞する世界的なNPOとなった。
ジョンの2 作目となる本書は、前著『マイクロソフトでは出会えなかった天職』の“その後”を伝える内容。本作の読みどころのひとつは、スターバックスの出店スピードをもしのぐ勢いで途上国に図書館・図書室を設置する“超成長組織”のリーダーとしての、ジョンの苦悩と試行錯誤だ。世界的に注目される社会起業家とはいえ、ジョンもひとりの人間。信じた人物に裏切られ、思わぬハプニングに泣かされるなかで、リーダーとしての自分の至らなさにいらだつことも一度や二度ではなかった。それでも、「2015年までに子どもたちに教育機会を届ける」という途方もない目標に向かって突き進むジョンの姿は、私たちにとってもおおいに刺激になる。
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イントロダクション 10年間で1万カ所の図書館
第1章 大胆な目標は大胆な人を引き寄せる
第2章 1キログラムの金塊
第3章 人生の宝くじ
第4章 すべてはバフンダンダから始まった
第5章 チャレンジ・グラント・モデル──自分たちで助け合う手助けをする
第6章 バルマー主義で一流のチームをつくる
第7章 ツナミから1年
第8章 レンジローバーはいらない――経費削減戦争
第9章 ネパールのドクター・スース
第10章 ベイビー・フィッシュ、学校へ行く――現地語出版プログラム
第11章 南アフリカの悪夢
第12章 教育が社会を再建する
第13章 CEOを卒業する
第14章 ゴミ箱のなかの希望
第15章 「この図書館の本を全部読みます」
第16章 小さな肩に家族の夢をのせて
第17章 ミスターX
第18章 カンボジアに向けて──リテラシー・ワン
第19章 恐怖の足音
第20章 世界最長の資金集めメーター
第21章 公約違反
第22章 ボート・トゥ・リード
第23章 「本が読めなければ、学校は拷問だ」
第24章 テクノロジーがつなぐ想い
第25章 ミスター・ポエットとミス・ライブラリー