「社会起業3.0」の時代において、ひとりひとりの力が必要になってくる。まずは、「社会にいいことしなくっちゃ!」という気持ちから始めるのではなく、いま、気になること、やってみたいこと、わくわくすること。そんな“心のさざ波”から始めよう。
連載最終回では、「わたし」から始めるための「マイ・プロジェクト」の取り組みを紹介したい。自分という存在は、必ず誰かを「代表」している。身のまわりの小さく思える出来事こそ、じつは世界を変える「道すじ」につながっている(『社会起業家になりたいと思ったら読む本』では、8:一個人ができることに掲載)。
「社会にいいことを!」なんて思わない
「それ、ほんとうにやりたいの」って、思わず聞いてしまうことがある。社会起業っていう言葉に、自分を限定しなくていいよ。いちばんしたいこと、わくわくすること、気になること、ってなんだろう?
企業の就職人気ランキングを見て、自分の進路を決めるように、「社会にいいことしなくっちゃ」で始めないでほしい。
「社会にいいことを!」からではなくて、自分が出会ったこと、ほんとうに思っていること、そんな“心のさざ波”から始めよう。
『社会起業家になりたいと思ったら読む本』でも、著者たちは、大切なのは「まずは自分を知ること」としている。そのために、ぼくが慶應大学などで取り組んできたことを紹介しよう。
根っこに「自分」があるか?
ぼくは、2005年から慶應大学の湘南藤沢キャンパスを中心に、社会起業やソーシャル・イノベーションという分野で授業を担当し、たくさんの素晴らしい若者たちに出会ってきた。
このキャンパスは、病児保育サービス「フローレンス」代表、駒崎弘樹(『「社会を変える」を仕事にする』英治出版)や、バングラディッシュでバッグをつくり販売している「マザーハウス」代表、山口絵理子(『裸でも生きる』講談社)を含め、社会やビジネスの在り方を問い直す、多くのユニークな起業家たちが生まれていることでも知られている。
授業で必ず学生たちと話しているのは、ビジョンやゴールを掲げるのも大事だが、それが「自分」につながっているかどうか、だ。