ベルリンのユダヤ系市民宅のドアに落書きされた「ダビデの星」。ロンドンのバス車内で顔を殴られた正統派ユダヤ教徒の男性。フランスの著名なユダヤ系政治家のもとに届いた脅迫状。数世紀に及ぶポグロム（帝政ロシアのユダヤ人虐殺）とホロコースト（ナチスのユダヤ人大量虐殺）でユダヤ人が壊滅的被害を受けた欧州で、各国に残るユダヤ系住民が二重の打撃を受けている。第一の打撃は、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したことによる悲しみとショックだ。この攻撃は、少なくともイスラエルにいれば、欧州におけるユダヤ人の歴史を象徴するような攻撃から守られるという思い込みを打ち砕いた。第二の打撃は、この攻撃後、イスラエルがハマスに対する軍事作戦を展開する中で、反ユダヤ主義的な事件が増加していることだ。第2次世界大戦中に欧州大陸から逃れてきたユダヤ人を受け入れた英国では、ハマスの攻撃以降、ユダヤ系市民を狙った事件が少なくとも805件起きている。1984年から反ユダヤの事件関連のデータを収集している英国のユダヤ系団体「コミュニティー・セキュリティ・トラスト」によると、これは21日間の件数としては過去最高で、今年1～6月の合計を上回った。